研究課題/領域番号 |
25350167
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
馬場 良子 産業医科大学, 医学部, 講師 (90271436)
|
研究分担者 |
森本 景之 産業医科大学, 医学部, 教授 (30335806)
藤田 守 中村学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60037471)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 小腸 / 吸収上皮細胞 / トランスサイトーシス / エンドサイトーシス |
研究概要 |
本研究計画では小腸吸収上皮細胞の形態学的特徴を部位的・時期的に詳細に解析すると共に、マイクロアレイを用いた遺伝子発現の解析を行い、部位的・時期的構造および機能の特徴に関連する遺伝子を明らかにすることで、吸収上皮細胞という名前で一括りにされている細胞集団の多様性と動態を解明し、食物アレルギーの発症機序の解明および、予防に役立てることを目的としている。 平成25年度は、新生仔期、乳飲期、離乳期、成熟期のWistar系ラットを用い、幽門から回盲部を採取して、以下の検索を行った。①三次元的検索;走査型電子顕微鏡による小腸粘膜表面の形態、特に、絨毛および吸収上皮細胞の微絨毛の形態を観察した。②組織学的検索;パラフィン切片を作製し、種々の染色を行って、小腸の組織学的構築を観察した。③超微形態学的検索;透過型電子顕微鏡を用いて、小腸吸収上皮細胞、特にエンドサイトーシスやトランスサイトーシスに関与する膜系について観察した。④細胞化学的検索;高分子分子のトレーサー(HRP)を用いて、透過型電子顕微鏡により細胞頂部からのエンドサイトーシス機構、トランスサイトーシス機構の有無や発達の程度について、細胞化学的に検索した。 ①~④の結果、各時期において、上部小腸ではトランスサイトーシスに関与する膜系、下部小腸ではエンドサイトーシスに関与する膜系が発達した。成熟期では、上部小腸のトランスサイトーシス、下部小腸のエンドサイトーシスはそれぞれ基底側部細胞膜領域においてのみ生じた。しかし、新生仔期、乳飲期では、基底側部細胞膜領域だけでなく、頂部細胞膜領域からのトランスサイトーシスまたは、エンドサイトーシスが生じた。これらのことから、乳飲期である生後7日齢から14日齢の空腸(トライツの靭帯に相当する部位より遠位)および回腸(回盲部より近位)の吸収上皮細胞において、それぞれ発達した膜系構造が見られることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、平成25年度に吸収上皮細胞を形態学的に検索し、最も特徴が表れている時期と部位を決定後、マイクロアレイ解析まで行う予定であった。しかし、平成25年度内にマイクロアレイ解析に着手することができなかった。研究計画では、平成26年度においても、マイクロアレイ解析を予定していたため、若干遅れてはいるものの、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画していたように、小腸粘膜よりRNAを採取し、発現している遺伝子について、マイクロアレイ解析を行う。しかし、小腸粘膜には上皮以外に結合組織、平滑筋等が含まれることが考えられる。近年、小腸の陰窩上皮のみを分けることが可能であり、単一のLgr5陽性細胞から、全ての小腸上皮細胞を作成することができるという報告(Sato T et al. 2009)がなされ、その方法の詳細についても公開されている(Sato T and Clevers H, 2013)。小腸粘膜に含まれる上皮細胞以外の影響をできる限り除くために、マウス小腸を用いて、陰窩上皮のみを分けて採取し、培養によって、絨毛様構造を形成することを試みる。陰窩より絨毛様構造が形成できた場合、それを用いてマイクロアレイ解析を行う。 得られたマイクロアレイ解析の結果から、乳飲期と成熟期、小腸上部と小腸下部の吸収上皮細胞の差異について詳細に検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に予定していたマイクロアレイ解析への着手が遅れたため、その費用を次年度に持ち越した。 ①平成26年度に小腸粘膜を用いたマイクロアレイ解析を行う。 ②マウス小腸より、陰窩の上皮を単離し、器官培養によって絨毛様構造を形成させることを試み、その上皮を用いてマイクロアレイ解析を行う。
|