適切な脂質摂取は、生活習慣病の予防に重要である。しかし、日本人が摂取すべき脂質摂取量に関するエビデンスは非常に限られている。本研究では、動脈硬化症のリスクファクターである血中脂質濃度に加えて、新しい動脈硬化度の指標であるCAVIを用いて検討を行った。 27年度においては57名の一般成人を対象に食事調査を実施し、血中脂質、CAVIおよび糖代謝マーカー値を測定した。食事摂取基準(2015年版)の基準値に合わせて解析した結果、脂質摂取エネルギー比30%以上と未満との間で、血中LDLおよびHDL-コレステロール濃度に有意な差は認められなかった。CAVI値においては、30%以上摂取しているグループのほうが有意に低い値を示したが、年齢で補正すると有意な差は消失した。飽和脂肪酸を7%以下摂取しているグループと7%超摂取しているグループを比較すると、血中コレステロール濃度やCAVI値に有意な差は認められなかった。その一方で、BMIと血中脂質およびCAVIとの間には、有意な相関が認められた。一価不飽和脂肪酸摂取量とヘモグロビンA1c値との間に,有意な負の相関が認められた。このことから、一価不飽和脂肪酸の摂取は,より低いヘモグロビンA1c値と関連することが示唆された。 27年度においてトランス脂肪酸の耐糖能に及ぼす影響についても検討(介入試験)を行った。その結果、トランス脂肪酸1%Eを追加投与した食事(食事全体では1.3%E)を摂取したグループの血糖値、インスリンおよびヘモグロビンA1c値は、対照群と比較して有意な差は認めらなかった。本試験結果から、1%E程度のトランス脂肪酸の追加投与は、耐糖能に対して大きな悪影響を与えないことが示唆された。
|