平成27年度は食物繊維粘性水溶液の摂取により胃粘膜を保護することができるかを、インドメタシン(IND)の経口投与(60mg/kg体重)によって誘発した実験胃潰瘍モデルを用いて検討した。実験は4群で行った。400cPメチルセルロース(MC)で10mPa・sと40mgPa・sの溶液を調整し、マウス5匹ずつに2週間自由摂取させた。効果を比較するために、レバミピド(REB:胃粘膜保護薬)をIND投与前に投与した(n=5)群と何も投与しない群(n=5)も設定した。IND投与後4時間で胃粘膜の状態を観察した。 IND誘発胃潰瘍は、粘膜全面にびらんが広がり、複数の斑状の潰瘍からの出血で胃内容物には血液が混じり赤黒く変色していた。REB群では粘膜の出血斑は大きさ・発生数ともに小さくなり胃内容物の血液による着色もわずかで、潰瘍症状は明らかに軽減されていた。40mPa・s群では2/5に出血斑が見られたが胃内容物の血液による出血が確認できたのは1例だった。10mPa・s群では3/5に線状傷、1/5に少数の斑状出血がみられたが、1例はほぼ正常な観察像を呈していた。胃内容物の血液による着色は目視では観察されなかった。現在Image Jを用いて潰瘍の程度の数値化を試みているが、MC溶液の継続的飲用による胃粘膜保護作用はほぼ明らかであるといえた。 研究期間全体を通じて、食物繊維の粘性水溶液摂取によって粘膜が厚くなり腺粘液分泌細胞が増えることが明らかになった。また、その作用は食物繊維の種類によって異なることや、同種の食物繊維でも分子量が大きい物の方が少量で効果があることが示された。また、食物繊維の粘性溶液摂取によって胃潰瘍などの侵襲から胃粘膜を保護できる可能性のあることがわかった。
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