研究課題/領域番号 |
25350173
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪女子短期大学 |
研究代表者 |
中野 長久 大阪女子短期大学, その他部局等, 教授 (20081581)
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研究分担者 |
山地 亮一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00244666)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能性食品成分 / メトキシフラボン / 黒ウコン / 骨格筋 |
研究概要 |
高齢化の進む日本を含む先進諸国で高齢者が自立した健全な生活を送るためには、「骨格筋量の増強と維持」は重要な課題であり、必須栄養素以外の食品成分でも骨格筋量の維持・増強をサポートできれば高齢者の寝たきり防止に役立つと期待できる。骨格筋は、筋芽細胞が融合して多核の筋管細胞へと分化し、その後筋管細胞が集まって筋繊維となるので、筋芽細胞株C2C12細胞の筋管細胞への分化を指標に筋形成を促進する食品成分を探索し、黒ウコン由来の3種のメトキシフラボン(5-hydroxy-7-methoxyflabone(⑧とする)、5-hydroxy-3,7-dimethoxyflavone(⑨とする)、5-hydroxy-3,7,4’-trimethoxyflavone(⑩とする))が筋形成促進に有効であることを見いだした。本研究ではこれらメトキシフラボンによる筋形成促進機構を解明するとともに、メトキシフラボンの体内動態を検討する。さらに形成された骨格筋の特徴を明らかにして形成された骨格筋が量的・質的に有効であるかを評価する。本年度、これらの3種のメトキシフラボンが筋管細胞に及ぼす効果を検討したところ、⑧>⑨=⑩の順番に筋管細胞を肥大化させた。そこで筋形成促進因子であり、筋肥大にも関わる因子としてインシュリン様成長因子-1(IGF-1)の関与を検討したが、3種のメトキシフラボンによりC2C12細胞におけるIGF-1の発現レベルは有意に影響がなかった。一方、メトキシフラボンで刺激された筋芽細胞でTCF活性が亢進したことから、Wntシグナルの関与が示唆された。⑨または⑩をマウスに2週間摂食させたところ、⑩では前頸骨筋は有意に増加し、長趾伸筋は増加傾向にあった(p = 0.059)。これらの結果から、少なくとも⑩はin vivoにおいても筋量の増加に有効であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本試験に使用している3種のメトキシフラボンが筋分化だけでなく、筋肥大も惹起していることを新たに見いだした。また筋分化促進に関するシグナル伝達系としてWntシグナルの関与を示唆する結果を得た。さらにマウスに摂取させることで実際に筋量が増加することも見いだした。したがってin vitroでの結果がin vivoでも反映したという点で本研究が今後さらに進展すると言う基盤を打ち立てることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
今年度筋形成促進に関与するシグナル伝達系としてWntシグナルの関与が示唆された。今後の課題としてはWntシグナル伝達系をさらに詳細に検討することである。例えば、Wntには多くのファミリータンパク質が存在するため、骨格筋に関与するWntについての発現動態を評価する。さらに今年度は⑧、⑨、⑩のうち、⑩がin vivoでも骨格筋量の増加に有効であることを見いだした。再現性を評価するとともに、他の⑧、⑨についても評価する。ただし、これらのメトキシフラボンを動物実験に使用する量を調製するには時間を要するため、それぞれ単品での評価が終わればこれらの3つのメトキシフラボンを含む混合物としても評価する。さらにこれらのメトキシフラボンの血中動態及び血中における存在形態についても検討する。
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