研究実績の概要 |
骨格筋は、糖や脂質を代謝する組織であるとともに、身体を支え、動かす役割を担う組織である。加齢とともに筋量の低下する高齢者にとっては、メタボリックシンドローム対策だけでなく、介護を不要とするロコモティブシンドローム対策として「骨格筋量の増強と維持」が重要な課題となる。したがって、食品成分で骨格筋量の維持・増強をサポートすることは高齢者の寝たきり防止に役立つと期待できる。これまでに、黒ウコン由来の3種のメトキシフラボン(5-hydroxy-7-methoxyflabone(⑧とする)、5-hydroxy-3,7-dimethoxyflavone(⑨とする)、5-hydroxy-3,7,4’-trimethoxyflavone(⑩とする)に筋肥大促進効果を持つことを見いだしていたが、今回、5-hydroxy-3,7,3’,4’-tetramethoxyflavone (⑦とする)にも筋肥大効果があることを見いだした。これらの化合物の構造・活性(肥大効果)を評価したところ、メトキシフラボン骨格のA環の5位の水酸基と7位のメトキシ基が筋肥大に寄与することが判明した。さらにこれら4種のメトキシフラボンによる筋肥大効果が加齢による筋量の低下の抑制に有効であるかを加齢促進マウスで評価した。メトキシフラボンは精製過程において、⑦、⑧、⑨、⑩を含む画分(⑦―⑩混合画分とする)として粗精製できる(メトキシフラボンとして76%含有)。そこで⑦―⑩混合画分含有食を加齢促進マウスに4週間摂取させたところ、コントロール食を摂取させた加齢促進マウスに比べてヒラメ筋量が有意に増加した。⑦―⑩混合画分含有食を摂取したマウスでは筋断面積が有意に増加していた。これらの結果からメトキシフラボン⑦―⑩混合は筋量を増加させる、つまり筋肥大効果を持つことで加齢による筋萎縮を抑制できることが示唆された。
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