各種刺激の脳機能賦活効果を見える化するために、近赤外分光方式(NIRS)にもとづく脳血流変化量を指標とした評価システムの構築について検討してきたが、今年度は、ワーキングメモリ課題遂行時のNIRS脳血流変化量に及ぼすαピネンの影響について調べた。αピネンは松などの樹木に含まれるモノテルペンの一種であり、森林浴効果などが知られている。また、ミョウガや春菊などにも含まれており、巷間ではミョウガを食べると物忘れしやすくなるなどという俗説がある。 ワーキングメモリ課題遂行時の平均反応時間と正解率について、空間性ならびに言語性ワーキングメモリ課題のいずれについても、α-ピネンによる刺激負荷によって課題に対する実験参加者の平均反応時間は短縮されたが、一方で正答率はやや低下した。ただし、これらの傾向は実験参加者一様ではなかった。 それぞれの課題遂行時における前頭前野脳血流変化量について、酸素化ヘモグロビンの上昇と脱酸素化ヘモグロビンの低下が認められたことから、この間に脳の神経活動が亢進していることが推察された。これらの神経活動は、α-ピネン刺激の負荷により酸素化ヘモグロビンの減少を誘発した。これらの現象を、前頭部、左背外側部ならびに右背外側部のそれぞれについて局所ごとに解析したが、空間性と言語性のワーキングメモリ課題間で顕著な差は認められなかった。しかしながら、いずれの課題においてもα-ピネンによる刺激負荷によってそれぞれの部位間における酸素化ヘモグロビンは低下した。
|