研究概要 |
本研究課題では、果汁に含まれる糖質を液体として摂取した場合のインスリン抵抗性や糖尿病の発症・進展に及ぼす影響について実験動物を用いた検討を行うとともに、果物由来の機能性成分を豊富に含む不溶性画分を再添加することによる予防効果を正常及び糖尿病モデル動物を用いて明らかにする 今年度は先ず100%ミカン果汁(Brix 10.5)中の糖含有量(Sucrose, glucose及びFructose)をLC/MSで定量分析した。次に珪藻土濾過により清澄果汁を調製した後、同様に清澄果汁中の糖含有量を測定した。3種の糖を添加することで果汁と同じ糖組成を含む清澄果汁、及びこれらの果汁と同量の糖組成となる対照糖質液を調製した。これら3種の溶液を正常マウスに強制胃内投与し、投与後の血糖値変化を投与前、投与後30, 60, 90, 120及び180分後に測定するとともに投与180分後までのAUC値を求めた。その結果、各群間での血糖値に有意な差はみられなかったが、AUC値は対照糖質液>透明果汁>ミカン果汁の順に低くなる傾向が認められた(傾向性P=0.011)。 次に、果汁製造時に取り除かれる不溶性画分を清澄果汁に一定量再添加し、糖質摂取による急性的な血糖値上昇がどの程度抑制されるか検討を行った。その結果、16.7%、28.6%及び37.5%の不溶性画分を添加すると、添加量多いほどAUC値は低くなる傾向が認められた(傾向性P=0.045)。 更に100%ミカン果汁(Brix 10.5)を飲料水に3, 10,及び30%添加し、マウスに自由摂取させ、果汁負荷がインスリン抵抗性に及ぼす影響を検討した。また同量の糖質を含む清澄果汁、対照糖質液についても検討を行った。その結果、投与開始から16週後まで4週間おきにグルコース2g/kg腹腔内投与による糖負荷試験を行ったが、何れの群においても飲料水を投与した群と比較してインスリン抵抗性に大きな変化は認められなかった。また血液生化学的検査においても何れも顕著な差は認められなかった。
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