• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実施状況報告書

果汁飲料のインスリン抵抗性に及ぼす影響解明

研究課題

研究課題/領域番号 25350175
研究機関独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

杉浦 実  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所カンキツ研究領域, 上席研究員 (10355406)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード果汁 / 不溶性画分 / インスリン抵抗性 / 糖尿病 / 糖負荷試験
研究実績の概要

昨年度に引き続き、今年度はインスリン抵抗性ハイリスクなモデルである自然発症糖尿病モデルマウスを用いて検討を行った。肥満を伴う自然発症糖尿病モデルマウスであるBKS.Cg Lepr db/db、及びそのコントロールであり糖尿病を発症しないヘテロ個体BKS.Cg Lepr db/+mを実験に供した。昨年度の研究で調製した清澄果汁と同量の糖質を含有する糖液を各濃度(3%, 10%及び30%)に飲料水に添加することでマウスに連続投与を行った。投与開始から16週間後まで4週間おきに各群のマウスをブドウ糖負荷試験(インスリン抵抗性試験)に供し、ブドウ糖強制投与後の血糖値の上昇変化を計測することでインスリン抵抗性を評価した。その結果、糖質液を慢性投与した実験区においてはブドウ糖負荷後の血糖値上昇が対照群として飲料水のみを投与した群と比較して高くなる傾向がみられたが有意な差は認められなかった。これはdb/dbマウス群及びdb/+mマウス群においても同様の結果であった。次に糖質液投与16週間後に一晩絶食させた各群のマウスから全採血し、血中のグルコース値や血清脂質を測定するとともにインスリン値を測定した。その結果、db/dbマウス実験区では糖質液投与群において対照群と比較して有意な血中総コレステロール値の上昇、及びdb/+mマウス実験区で糖質液投与群において有意な血中中性脂肪血値の上昇が認められた。他の測定パラメーターでは有意な変化は認められなかった。これらの結果から、db/dbマウス及びdb/+mマウスに果汁30%に相当する糖質を16週間慢性投与しても、脂質代謝に悪影響を及ぼすものの有意なインスリン抵抗性の増悪は認められないことが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度は、糖質を等量含有する果汁であっても、対照糖質液と比べて急性投与後の血糖値上昇は、対照糖質液>清澄果汁>100%果汁の順に低く抑えられる傾向が認められ、糖質以外の成分が残存しているほど血糖値上昇はやや抑えられる傾向にあること、また不溶性画分の再添加量が多いほど血糖上昇は有意に抑えられることが解った。一方、正常マウスに糖質液(果汁3%, 10%及び30%に相当)を16週間慢性投与しても2gグルコース負荷によるインスリン抵抗性試験では飲料水のみを投与した対照群と比較して顕著な差はほとんど認められなかった。これらの結果から、Wild type(正常)のマウスでは30%果汁に相当する糖質を液体で慢性投与してもインスリン抵抗性や各種血清脂質の指標値に悪影響を及ぼさないことが判明した。
そこで今年度はインスリン抵抗性ハイリスクなモデルである自然発症糖尿病モデルマウスを用いて更なる検討を行った。その結果、肥満を伴う自然発症糖尿病モデルマウスであるBKS.Cg Lepr db/db、及びそのコントロールであり糖尿病を発症しないヘテロ個体BKS.Cg Lepr db/+mに30%果汁に相当する糖質を液体で慢性投与しても血清脂質を上昇させるもののインスリン抵抗性には顕著な影響を及ぼさないことが判明した。次年度では自然発症糖尿病モデルマウスに果汁を慢性投与した際のインスリン抵抗性及び血清脂質に及ぼす影響について引き続き検討を行う。糖質液の慢性摂取がインスリン抵抗性を惹起させるという仮説に対し、本研究ではWild type及び2型糖尿病モデルマウスのどちらにおいても顕著な影響は認められなかったが、食物繊維やカロテノイドなどの糖質以外の果汁成分の添加により急性的な血糖上昇は抑えられることを確認しており、本研究は概ね順調に進展しているものと考える。

今後の研究の推進方策

前年度に引き続き、糖質液及び同用量の糖質を含有するミカン果汁の慢性投与がインスリン抵抗性に及ぼす影響を検証する。平成25,26年度の実験では、正常モデルマウス及び2型糖尿病モデルであるdb/dbマウス(対照としてdb/+m)に糖質液を16週間に渡り慢性投与しても、顕著なインスリン抵抗性の変化は認められなかったが、平成27年度ではミカン果汁の慢性投与がこれらマウスのインスリン抵抗性及び血清脂質に及ぼす影響について検討を行う。平成25年度の研究で調製した果汁と同用量の糖質を含有する糖液、及び果汁を各濃度(3%, 10%及び30%)になるように飲料水に添加することで自然発症糖尿病モデルマウスに連続投与を行う。投与開始から4週間おきに各群のマウスをブドウ糖負荷試験(インスリン抵抗性試験)に供する。ブドウ糖強制投与後の血糖値の上昇変化を計測することでインスリン抵抗性を評価する。果汁の投与期間はインスリン抵抗性試験の結果をみて、更に延長させるかどうか判断する。インスリン抵抗性試験の後、更に1~2週間の投与を継続した後、全採血して血中のグルコース値や血清脂質を測定するとともにインスリン等のサイトカイン類についても分析を行う。これらの実験により、自然発症糖尿病モデルマウスのインスリン抵抗性に及ぼすミカン果汁成分の影響を検証する。

次年度使用額が生じた理由

実験に使用したマウス及び研究試薬類の納品価格が予定よりも安価での納品になったために次年度使用額が生じたと考えられる。

次年度使用額の使用計画

H27年度の実験では血清脂質や血中サイトカイン類等の各種パラメーターを数多く購入する必要があるため、これらの購入経費に充当する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Comparison of β-cryptoxanthin with β-carotene regarding the bioavailability and tissue distribution in its intact form in rats.2014

    • 著者名/発表者名
      Sugiura Minoru, Ogawa Kazunori and Yano Masamichi
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology and Biochemistry

      巻: 78 ページ: 307-310

    • DOI

      10.1080/09168451.2014.878220.

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2016-05-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi