本研究課題では、果汁に含まれる糖質を液体として摂取した場合のインスリン抵抗性や糖尿病の発症・進展に及ぼす影響について実験動物を用いた検討を行うとともに、果物由来の機能性成分を豊富に含む不溶性画分を再添加することによる予防効果を正常及び糖尿病モデル動物を用いて検討した。 正常マウスに100%ミカン果汁(Brix 10.5)、珪藻土濾過により調製した清澄果汁及びこれらと同量の糖質(ブドウ糖、果糖及びショ糖)を含む対照糖質液を単回経口投与し、投与後の血糖値変化を評価したところ、対照糖質液<透明果汁<ミカン果汁の順に急性投与後の血糖上昇が有意に抑制された。次に、果汁製造時に取り除かれる不溶性画分を清澄果汁に一定量再添加し、急性投与後の血糖値上昇がどの程度抑制されるか検討を行ったところ、不溶性画分の添加量多いほど血糖上昇は有意に抑制された。一方、正常及び糖尿病モデルマウスに果汁と同量の糖質を含む糖液を16週間慢性投与しても、2gグルコース負荷試験で評価したインスリン抵抗性は飲料水のみを投与した対照群と顕著な差はほとんど認められず、インスリン抵抗性が増悪することはなかった。これに対し、果汁を慢性投与した糖尿病モデルマウスのインスリン抵抗性は有意に改善され、果汁中のミカン成分あるいは不溶性食物繊維等がインスリン抵抗性を改善する作用のあることが示唆された。これまでミカンに特徴的に多く含まれるカロテノイド色素であるβ-クリプトキサンチンに糖尿病モデルマウスのインスリン抵抗性を改善させる作用のあることが既に明らかになっていることから、果汁中の不溶性画分に含有されるβ-クリプトキサンチンによる効果であることが示唆された。また不溶性画分に含有される食物繊維やフラボノイドの作用についても今後、検証する必要がある。
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