研究課題/領域番号 |
25350178
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
石見 佳子 独立行政法人国立健康・栄養研究所, 食品保健機能研究部, 部長 (50154159)
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研究分担者 |
石見 幸男 茨城大学, 理学部, 教授 (80159772)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大豆イソフラボン / エクオール / 脂肪細胞 / 乳がん細胞 / 細胞増殖 / DNA複製 / DNA二本鎖切断 / 細胞分化 |
研究概要 |
研究目的:大豆イソフラボンは弱いエストロゲン様作用を持つことが示唆されており、閉経後の骨・脂質代謝異常、更年期症状等に対して有効に作用する可能性が示唆されている。なかでも、ダイゼインから腸内細菌によって産生されるエクオールは、他のイソフラボンに比べて強いエストロゲン様活性を持つことが示唆されている。しかし、その作用の詳細ならびに安全性は不明である。そこで、本研究では、有効性評価として脂質代謝及び血管系に対するエクオールの新規作用とそのメカニズム、安全性評価として乳腺細胞の増殖に対する作用とそのメカニズムを分子、細胞および動物レベルで明らかにすることを目的とする。 研究計画:25年度は、有効性評価としてエクオールの脂肪細胞の増殖と分化に対する作用とそのメカニズムを、安全性評価として、乳腺細胞のDNA複製に対する影響を評価する。 研究結果:エクオールは、脂肪様株細胞MC3T3-L1細胞の増殖に対し、0.1~50μMでは影響を及ぼさなかったが、100μMでは有意に抑制した。エクオールは、脂肪細胞の分化の指標であるPPARγ、C/EBPα、FASの遺伝子発現に対し、低濃度では促進したが、100μMでは有意に抑制した。一方、エストロゲン受容体タンパク質の存在を確認したヒト乳がん由来のMCF-7細胞を用いて、エクオールのDNA複製に対する影響を、DNA合成前駆体となるブロモデオキシウリジンのDNAへの取り込みを蛍光顕微鏡観察することにより評価したところ、1μMエクオールは、無添加細胞に比べDNA合成を促進する傾向があったが、統計学的な有意差は認められなかった。この結果の確実性を検討するために、今後、実験例数を増やして、エクオールの乳がん細胞のDNA複製への影響を明らかにする。一方で、エクオールは100 μMまで、2本鎖DNA切断の指標となる、H2AXのリン酸化を有意に増加させなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エクオールの脂肪細胞の増殖と分化に対する作用に関する評価においては、H25年度の研究計画を100%達成することができた。一方、乳がん細胞のDNA複製への影響に関しては、用量依存性試験を実施する必要があることから、達成度は75%と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、有効性評価としてエクオールの血管内皮系細胞の機能に対する影響を評価する。安全性評価は、平成25年度にヒト乳がん由来のMCF-7細胞を用いて、エクオールのDNA複製に対する影響を、DNA合成前駆体となるブロモデオキシウリジンのDNAへの取り込みにより評価したところ、1μMエクオールは、無添加細胞に比べDNA合成を促進する傾向が認められたが、統計学的な有意差は認められなかった。この結果の確実性を検討するために、今後、用量依存性試験を実施するとともに、実験例数を増やしてエクオールの乳がん細胞のDNA複製への影響を明らかにする。また、エクオールのMCMタンパク質の発現およびクロマチンへの結合性への影響についても評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画当初は脂肪細胞を購入する予定であったが、凍結細胞として保有していたことから、脂肪細胞及び培養液等の購入が不要となったため。 次年度は血管内皮細胞の機能性評価を計画しており、新規の作業になるため、技術補助員の人件費に充てる計画である。
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