研究課題/領域番号 |
25350180
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立環境科学研究所 |
研究代表者 |
中村 寛海 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究員 (00332445)
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研究分担者 |
井口 純 宮崎大学, 学内共同利用施設等, 助教 (00437948)
西川 禎一 大阪市立大学, その他の研究科, 教授 (60183539)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リステリア / MLST / 施設定着 / バイオフィルム / 菌体外多糖 |
研究概要 |
平成25年度は食品製造施設および食品由来リステリア101株について新規遺伝子型別法であるMulti locus sequence typing (MLST)法による型別を実施して施設定着に関わる遺伝系統の探索を行うとともに、既知のリステリアゲノム株39株の塩基配列と比較した。また、高バイオフィルム形成性の定着株(P株)と、P株の対照として調査期間中一度しか分離されなかった非定着株と考えられるT株についてバイオフィルムの菌体外多糖(EPS)を構成する構成糖の解析を行った。 MLSTによる系統解析の結果、101株のリステリアは非常に近縁であり、3つの主要グループが確認された。これらは既知のリステリアゲノム株とは異なるグループであった。A社由来77株のうちPFGEパターンによる定着株は21株で、これらはST321に分類された。A社以外の食品由来株にST321は見られなかった。同一施設製造の食品由来で異なる時期に採取され、P株の可能性があるB社2株、C社2株、D社2株、F社2株は、それぞれST193、ST2、ST155(D社、F社)であった。バイオフィルムのEPSに含まれる多糖の構成糖について核磁気共鳴(NMR)、高速液体クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィーによる解析を実施した結果、P株とT株のEPSの構成糖は異なる可能性が示唆された。 ST321に加えて新たにST193、ST2、ST155がP株の候補として考えられたこと、EPSの構成糖がP株に特有である可能性が示唆されたことは今後、P株の定着要因をさらに検討する上で有意義な情報である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画は、1)施設および食品由来リステリアのバイオフィルム形成性およびバイオフィルムの消毒剤抵抗性、2)施設および食品由来リステリアのMLST法による遺伝子型別、3)リステリアバイオフィルムのEPSの多糖構造およびその組成解析、4)自由生活性アメーバの分離・培養法の確立を行うこととしていた。このうち、1)については、ほぼすべての株でバイオフィルム形成性を調べる実験は終了している。バイオフィルムの消毒剤抵抗性についてはP株とT株のみで実施しており、成果を論文として公表した。2)については、型別および平成26年度の計画とされていた系統解析まで全て終了しており、当初の計画以上に進展があった。3)については、追加的な解析が必要であるものの、予定していたNMRおよびHPLC解析は終了した。4)については現在準備を進めているところである。以上より、研究は当所の計画通り、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は新規で食品製造施設の調査を行うことが決まっており、これに先立って自由生活性アメーバの分離培養法の確立を行うべく現在準備中である。その後、施設内から実際にアメーバ(と同時に新たなリステリア菌株)を採集して食品製造施設から検出されるアメーバの実態を調べるとともに、平成25年度の研究成果で判明したリステリアP株の可能性があるST193、ST2、ST155の中から菌株を選定し、これらのリステリアとアメーバとの共培養について検討を行う。また、P株の可能性があることが新たに判明した株についてはバイオフィルムの消毒剤抵抗性試験を実施する。現在申請中の平成26年度のゲノム支援を受けることができれば、MLSTを実施済みの101株のリステリア全株についてゲノム解読を行い、同一施設由来株の詳細な系統解析とプロファージの解析、バイオフィルムのEPS形成に関わると考えられる糖鎖合成コード領域についてゲノム比較により株間の差異を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
リステリアバイオフィルムの菌体外多糖の構造および構成糖を解析する機器が研究代表者の所属する機関にはなく、これらの解析に必要な経費として10万円を人件費・謝金に計上したが、実際には無料で解析を実施してもらうことができたため、経費がかからなかった。また、自由生活性アメーバの分離培養に着手することができず、4月以降となったため、これに必要な消耗品費が未執行となった。 平成25年度に計画していた自由生活性アメーバの分離培養を平成26年度より着手することとしたため、平成26年度の消耗品費に自由生活性アメーバの分離・培養にかかる消耗品費を追加して使用する。
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