研究課題/領域番号 |
25350180
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研究機関 | 大阪市立環境科学研究所 |
研究代表者 |
中村 寛海 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究員 (00332445)
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研究分担者 |
井口 純 宮崎大学, 農学部, 准教授 (00437948)
西川 禎一 大阪市立大学, その他の研究科, 教授 (60183539)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リステリア / 自由生活性アメーバ / 食品製造施設 / 定着 |
研究実績の概要 |
リステリア(LM)は、食品を介してヒトに重篤なリステリア症を引き起こす。本菌は食品製造施設に定着し、製造・加工工程で食品を汚染することが示されている。分離株の分子疫学解析によって施設定着株の存在を認める報告が多数見られるが、これら定着株に特有の遺伝系統や属性はいまだ不明である。平成26年度は、環境中で様々な細菌と共生している自由生活性アメーバ(FLA)に着目し、FLA内で定着型LMが共生することにより、長期的に同一タイプのLMが分離されるのではないかという仮説のもと、食品製造施設内のふきとり材料を検体としてFLAとLMの検出状況を調査した。過去の調査で製品から高頻度にLMが検出された浅漬製造施設3施設から製造環境のふきとり材料等81検体を採取し、FLAおよびLMの検出を行った。その結果、81検体のうちFLAが11検体、LMが29検体から検出された。3検体でLMとFLAの両方が検出された。これらのうち2検体は包装機のふきとり材料であった。検出されたFLAはAcanthoamoeba(3遺伝子型)、Hartmanella vermiformisおよびNaegleria sp.であった。分離されたLMについてPFGEおよびMLSTによる解析を実施した結果、これらは限られたPFGEパターンおよびSTを示した。この中には昨年度実施したMLST解析で定着株の可能性があると考えられたST155が含まれていた。3検体からLMとFLAの両方が検出されたが、LMとFLAの共生関係については不明であり、次年度以降明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画は、1)施設および食品由来リステリアの系統樹作成、2)リステリアと自由生活性アメーバとの共培養法の確立および菌株間の差異の検討、3)次世代シーケンサーによるゲノム比較解析としていた。1)については、平成25年度に実施済みである。2)については、アメーバの培養法を確立して食品製造施設から実際に自由生活性アメーバを分離し、数種類の自由生活性アメーバ野生株を入手することができた。次年度以降、これらの野生株を用いてリステリアと自由生活性アメーバとの共生関係の検討を行う予定である。3)については、ゲノム比較解析に供する株の選定を次年度に実施する予定である。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に入手した自由生活性アメーバ野生株とリステリア野生株の共培養を実験室内で行い、これらの共生関係について検討する。リステリアは、これまでの研究成果から定着株の可能性があるST193、ST2、ST155について調べる予定である。消毒剤耐性や環境への適応にトランスポゾンやプロファージの関与が報告されていることから、これらの遺伝子の保有状況を調べ、ゲノム比較解析を行うための株の選定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の設備備品費として、遺伝子解析の系統樹作成のために、系統解析用PC(20万円)と系統解析用ソフト(90万円)の購入を予定していたが、現在保有するPCおよびソフトで対応できたことから、購入しなかった。90万円は物品費として使用し、一部を老朽化していた小型遠心機の購入にあてたが、予算が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
申請者の所属する研究所は次世代シーケンサーを保有していないことから、リステリアゲノムを解読するために平成26年度にゲノム支援を申請したが、採択されなかった。リステリアゲノムの解読を実施するためには、民間企業を利用するがあるいは実費負担で外部機関に委託する必要があり、繰り越した20万円をこれにあてたい。
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