本研究の目的は,算数・数学科における問題解決の授業に関する好ましい授業過程を提案することであり,その提案の妥当性や実践の可能性を授業研究に基づいて検証することである。この目的達成に向けて,研究計画に基づいて,3年次も北海道・静岡・埼玉の3地区で研究グループをつくり,互いに他の地区の授業研究会にも参加して研究をすすめた。3年間で20回を超える授業研究の機会を設け,問題解決の授業の実践に基づいた分析や検討を行った。研究の過程で「数学のよい授業とは何か」ということも課題になり,数学の「よい授業」について主張している先行研究・実践の分析・検討や具体的な実践事例の集積・検討も行った。研究の成果として,問題解決の授業が算数・数学科における「よい授業」であることを改めて確認するとともに,数学の「よい授業」に関して次の1,2のように集約することができた。 1.数学の「よい授業」 Ⅰ.生徒が主体的に取り組み,考え続けている授業,Ⅱ.目標が適切に設定され,それが達成される授業 2.「よい授業」を行うための要件 [要件①]本時の目標を明確にする,[要件②]問題と問題提示の仕方を工夫する,[要件③]考えの取り上げ方を工夫する この3つの要件に基づいた問題解決の授業を実践した結果,その多くの授業でⅠとⅡのような「よい授業」が実現されることを確認することができた。なお,研究成果の一部として,27の授業実践例を含めた単行本『理論×実践で追究する!数学の「よい授業」』(明治図書)を出版予定(平成28年5月)である。3年間の研究を通して,研究代表者・分担者・協力者が互いに他の地区の授業を参観して協議する中で,数学の授業についての共通点とともに異なる点を確認できたことも,これからの研究や授業実践にとっての貴重な収穫になった。
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