研究課題/領域番号 |
25350185
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
村上 祐 岩手大学, 教育学部, 名誉教授 (60006327)
|
研究分担者 |
武井 隆明 岩手大学, 教育学部, 教授 (10109150)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 科学的思考力育成 / 探究活動 / 基礎的知識の活用 / 教科書の点検・補完 / 粒子概念 |
研究概要 |
1.研究体制の整備と研究経過 初年度(2013年度)の6月に第1回の全体研究会を開催して,共同研究者・連携研究者・研究協力者からなる研究チームを組織し,研究の背景や目的および目的を達成するための課題を確認した。(1)小・中理科教科書に記載されている探究活動(実験・観察等)を,児童・生徒の思考力育成・向上の観点から検証,(2)諸外国における探究活動・実験教材の調査,(3)思考力育成・向上のため考案・開発した教材を用いた授業の実践 ,(4)「粒子」で考える体系的物質学習の構築,などの研究課題について,日本理科教育学会全国大会(2013年8月)等での研究発表および秋以降予定される第2回研究会へ向けて取り組むこととした。 物品費として,改訂された小中学校理科教科書を複数セット購入し,メンバーに配布した。 2.研究成果と報告 上記研究課題の(1)については,中学校2年の「化学変化と原子分子」の導入実験や中学校1年「溶解と質量保存」と「浮力」を関連させる実験等が,第2回研究会(2014年2月)で具体的に提案された。日本理科教育学会では思考力育成に関する研究・実践を2件発表した。(2)については,第2回研究会で「状態変化と溶解」に関するドイツと米国の教科書が紹介され,日本の教科書等と比較検討した。(3)については,これまで開発した教材(小学校5年「温度とものの体積」,中学校1年「気体な発生と性質」)を発展させ,理科教育学会のワークショップで演示実験した(2件)。(4)については,これまで数回発表してきた「つぶつぶシート」を用いた授業展開が理科教育学会のシンポジウムで取り上げられた。さらに「つぶつぶシート」の実践研究を2件発表した。 なお,課題④に関連する論文を理科教育学研究(日本理科教育学会)に発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) 主な研究課題として設定した4項目について,次のように,それぞれ順調に進められているからである。 (1)の教科書の探究活動を思考力育成の観点から見直すことについて,これまで新たに4点挙げ,そのうち2点については学会で報告した。(3)の外国教科書の調査については,ドイツと米国の教科書を検討中である。③のこれまで開発した教材についても,新たな改善を加えるなどして学会のワークショップで実演した。(4)についても,「つぶつぶシート」を用いた物質学習の単元間および学年をつなぐ授業展開が進んでいる。また,児童・生徒に「粒子概念」が定着していれば,③の教材による実験結果を他の単元との繋がりで理解できる。さらに,(1)で取り上げる「溶解と質量保存」と「浮力」を関係させた実験においても,その本質の理解のためには粒子概念が必要であると考えている。 2013年度は,学術論文2報,全国規模の学会での口頭発表(ワークショップを含む)を7件おこなった。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目の2014年度は,基本的に前年2013年度と同様に研究を進める。 年度はじめに(5月を予定)全体会合を開き,前年度の研究経過・結果を総括するとともに,メンバーの今年度の目標および役割分担を確認する。 1年目の「教科書に記載されている探究活動(実験・観察) が思考力育成に資するものとなっているか」の検証結果をそれぞれ紹介し,思考力育成のための授業設計・実験教材を検討する。後半にはそれぞれ新教材による授業計画を立て,実践をできるだけ多く行う。児童・生徒からの授業評価や,「思考力育成に繋がっているか」の検証により改善していく。 夏~秋にかけて開催される理科教育・科学教育関連の学会で,「教科書に記載されている探究活動(実験・観察)を思考力育成に資するものとする」研究結果をできるだけ多く発表して,種々の立場からの意見と交流する。 最終の2015年度には、小学校および中学校それぞれで「なぜそうなるのか」を「粒子」で考える体系的(単元間の繋がりがある) 学習を構想する。また,理科教育・科学教育関連の学会でできるだけ多くの研究発表を行う。 これらの研究発表により,本研究の成果の概要が固まる。 年度の後半,それまでの研究成果を公開報告するシンポジウムなどを計画する。 最後に,3年間の研究のまとめを行い,研究報告書を作成する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度に残した金額の主なものは,思考力育成に役立つとして新たに考えた実験(「溶解と質量保存」と「浮力」を関連させて考えさせる実験)の教材費用である。通常中学校で使うバネばかりよりやや精密なものが必要で,その教材の検討と改良に時間がかかってしまったので,次年度に回した。 2年目の2014年度の請求額と2年目に繰り越した経費を合わせて,主として,3回予定している盛岡での研究会と日本理科教育学会全国大会(愛媛大学)等の学会発表のための旅費,および授業実践における教材開発費に充てる予定である。特に,繰り越す原因となったバネばかりの作成については,いくつかの種類のまきばねの購入費や,それを支える支持台の作成費を予定している。
|