本研究の目的は,学生間,学生と教師,学生と現象(実験・観察)といった,学習者相互作用を重視したインタラクティブな物理授業(相互作用型の物理授業)を,実践を通じて開発すると同時に,その効果を科学的に分析・評価し教材開発・授業改善につなげていく方法を研究開発することにある。平成27年度は本研究課題の最終年度に当たり,研究の継続と総括,ならびに研究発表を行った。 平成25,26年度の研究で,ピア・インストラクション(PI)型授業の定量化とフィードバックループ開発に関する基礎的な研究を行ってきたが,平成27年度は,引き続き上記の研究を行うとともに,CLASS(Colorado Learning Attitude about Science Survey)を用いたattitude調査を実施し,物理学習に対する学習者の姿勢を定量化することを試行した。具体的には,CLASSの和訳とその妥当性評価を行い,高校及び大学において試行した。その結果,FCIとCLASSの間に男子学生には弱い相関があるが,女子学生には相関がみられないことがわかった。この結果は,物理概念理解と学習姿勢との関連においてジェンダー差がみられることを示唆するが,詳細については今後の研究がまたれる。 また,物理学習者の感じる困難を分析するために,FCIの誤答を「誤概念分類表」に基づき系統的に分類した。その結果,特定の誤概念にジェンダー差がみられることがわかった。さらに,PIにおける生徒間の議論のプロトコル分析や,think aloud方式による物理学習者の詳細な思考過程分析を行うことにより,定量的データの背景にある生徒の思考過程を調査した。 なお,本研究課題の内容について,科学教育学会および国際物理教育会議において招待講演を行った。
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