本研究は、小学校高学年から中学校にかけての数量関係領域の学習について、学習の対象の構成自体に問題があるのではないかとの前提に立ち、学習活動の問題点の明確化とその改善のための学習活動の構成とを目指すものである。事業は平成25~27年度の3カ年で計画され、27年度で終了していたが、その成果発表の一つの機会である国際数学教育会議が平成28年度の開催であることから延長を申請したものであった。延長申請時には発表用の原稿はすでに投稿し、受理もされていたが、その後、平成28年7月25日から30日にドイツ・ハンブルク大学で開催された同会議に参加し、研究発表を行った。また同様に、平成28年3月にも本研究をもとにした論文を作成し、同年6月12日に埼玉大学で開催された日本数学教育学会でその内容を発表するとともに、その論文集に掲載された。 ここまでの研究により、数学的対象の成立においては、対象として成立すべき内容を対象として語ったり、そこに働きかけるようなディスコースを形成し、学習者がこのディスコースに参加することが重要であることが見出されていたが、これらの発表では、こうしたディスコースの形成が重要だとの指摘に加え、授業の途中において対象の成立を促すディスコースへの変容が必要となるために教師が吟味の対象の変更を意図的に行い、そのことを学習者と共有することの重要性、あるいは教科書の記述を数学的対象が成立するためのディスコースの形成という観点から分析することの重要性やディスコースの観点から必然的に生じうる学習の困難の存在について提案をした。 こうした分析から、実際の授業の展開に関わる見解、あるいは教科書の記述の仕方やその利用の仕方に関わる見解が得られた。
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