高等学校生物で、動物組織の観察を伴う新規の実習を開発し、新課程の生物が知識に偏ることなく、「動物・生命そのものに立脚し、生徒の実感を伴う学習」となるようにする。新たに開発した「簡易凍結徒手切片法」は、従来、専用機器、高度な技術、煩雑な操作と時間を必要とした動物の組織実習を、極めて短時間に簡便に標本を作成できるようにした。この簡便さにより、どの学校でも普通に動物組織を観察できるようになり、生徒の実習課題や内容を大幅に広げた。特に、その煩雑さからマウス等の実験動物に偏っていたが、多様な動物門に属する生物の組織を見る機会が得られた。 多様な動物門に属する生物の組織を観察する長所を活かし、これまでにない動物の系統、進化、体の複雑さを実感する授業案、実験案を作成した。H25年度からH26年度にかけて、広く動物の系統を俯瞰するために、幅広い多様な動物を対象とした。具体的には、側生動物に属するカイメン、後生動物で二胚葉性の刺胞動物のヒドラ、前口動物の扁形動物のプラナリア、環形動物のミミズ、後口動物の脊椎動物に属するイモリ、ニワトリ胚の体のつくりを、実物を通して観察できる実験となった。このように、実際の動物本体の観察に加え、多様な動物の体のつくりを比較、観察することで、それぞれの動物の特徴が実感出来るものとなった。これまで動物の系統を広く俯瞰する実験はないため、類のない重要な実験が開発できた。 最終年度に当たるH27年度は、さらに、脊索動物のナメクジウオを取り上げ、簡易凍結徒手切片法で、体の横断面の構造を観察する実験を開発した。この観察により、脊索動物の太い脊索が実際に観察でき、脊椎動物のイモリ胚、ニワトリ胚への連続性を実感する実験となった。H26年度まで、脊椎動物以外の動物門に属する動物が多かったが、本年度の観察により、後口動物の脊索動物を含むより広い充実した内容となった。
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