研究課題/領域番号 |
25350205
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大橋 淳史 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (50407136)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 化学教育 / 教材化研究 / アントシアニン / 紫カイワレ大根 |
研究概要 |
本年度は,アントシアニンを抽出する植物として,紫カイワレ大根に注目し,本植物について検討を行ってきた。紫カイワレ大根は通常水耕栽培で栽培される。この手法は根の観察に適しているが,市販されている容器は大量に栽培するためものものであり,値段も個人で揃えるには高価であった。そこで,児童・生徒が個人で使える自作の水耕栽培容器の開発を行った。製作した栽培容器を用いて,中学生を対象に実践を行い良好な結果を得た。しかしながら,水耕栽培は,毎日水を替えなければならないこと,容器の転倒による水の漏出の問題があり,学校では用いにくい栽培法であることが明らかとなった。 そこで,紫カイワレ大根を栽培する培地について検討を行った。9種類の培地について検討を行った結果,株式会社ベネッセコーポレーションから入手した植物栽培用ポリマー「めばえジェル」が有用であることを明らかにした。めばえジェルは透明ジェル状ポリマーであり,予め栄養素が添加された状態で手に入れることができる。使用の際には,ジェルをプラスチックカップに入れて,種を乗せ,暗条件下,20~25℃で,1日1回霧吹きで水をやるだけで栽培可能である。また,ジェルは粘度が高いため容器を倒してもこぼれにくい。この「めばえジェル」と栽培用園芸土を用いて,大学生を対象に栽培実験を行った。その結果,いずれの場合でも問題なく,紫カイワレ大根の栽培が可能であることが明らかとなった。 紫カイワレ大根からのアントシアニンの抽出法は,小学校理科のムラサキキャベツと同様に,採取した紫カイワレ大根を5 mm程度にはさみで刻んで煮出すことで可能であること,得られたアントシアニンの色調変化はムラサキキャベツと遜色ないことを明らかにした。以上の結果より,紫カイワレ大根の教材化について成功し,株式会社ベネッセコーポレーションおよび東京書籍株式会社にて,教科書への掲載が検討されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
紫カイワレ大根の教材化に成功し,教材として株式会社ベネッセコーポレーションおよび東京書籍株式会社にて教科書への掲載が検討されている。これらについては現在理科教育研究誌へ投稿中である。また,紫外吸収装置を用いた補助教材作成も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
アントシアニンを利用した他の教材化研究についても検討したい。具体的には,中学校理科で復活し,学校教員が指導に悩むことの多い「イオン」の領域の1価と2価のイオンの判別にアントシアニンが利用できる可能性がある。これについて検討を進めたい。また,紫カイワレ大根の根の細胞の遺伝子観察,遺伝子発現条件検討などの方面への展開も期待される。 課題としては,本研究室は不人気研究室であり,学生がいないことが課題である。進めたいテーマは多いが,手が足りない状況である。本職の身体はひとつなので,独りではできることに限りがある。研究室を人気研究室にするのは難しいので,これに関してはどうしようもない。対応策があるとすれば,異動することであろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
アントシアニンの色を可視紫外光吸収測定装置で測定した補助教材作成と,紫カイワレ大根の教材化についてまとめた資料を製本する予定で予算を残していたが,担当していた大学院生がこれらの作成途中で投げ出して修了してしまったため,予算が残った。 補助教材と紫カイワレ大根の教材化についての資料を作成する予定である。
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