研究課題/領域番号 |
25350205
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大橋 淳史 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (50407136)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 化学教育 / 小学校 / 中学校 / 高校 / イオン / アントシアニン |
研究実績の概要 |
本年度は,抽出したアントシアニンの利用法について検討を行った。植物中のアントシアニンはイオンによって呈色し,植物に多彩な色が見られるが,イオンとアントシアニンの関係についての教材は検討されていない。また,中学校理科では現行指導要領になってイオンが復活しているが,イオンを学ぶための教材が少ないことが課題となっている。そこで,アントシアニンとイオンの呈色の教材化について検討を行った。 中学校理科で取り上げられるイオンは,ナトリウムイオン,リチウムイオン,カリウムイオン,カルシウムイオン,マグネシウムイオンである。これらのうち,ナトリウムイオン,リチウムイオン,カリウムイオンは1価の陽イオンであり,カルシウムイオンとマグネシウムイオンは2価の陽イオンである。アントシアニンは2価以上の陽イオンと錯形成して呈色するが,1価の陽イオンとは錯形成しない。そのため,教科書では取り上げられているものの,その意味は学習しない「イオンの価数」について実感を伴った理解を得られる教材になる可能性がある。アントシアニン水溶液に,1価の陽イオン水溶液を加えたところ色の変化は起こらず,2価の陽イオン水溶液を加えたところ,カルシウムイオンでは青,マグネシウムイオンでは緑に呈色した。これによって,教科書では「数字」としてしか取り扱われないイオンの価数は物質の性質を決める要因であることが理解できる可能性が示された。また,紫カイワレ大根を,高濃度カルシウム溶液やマグネシウム溶液中で栽培してもアントシアニンは呈色しないことから,陽イオンは根から吸収されていないこと,切り花にして水溶液に入れることで呈色することから細胞中には吸収されること,またイオンの種類によって呈色の有無があり,細胞は,カルシウムイオンはチャネルを通じて取り入れるが,マグネシウムイオンは細胞膜の半透性により取り入れないことなどが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
東京書籍中学校理科教科書の自由研究への掲載,学術論文の掲載,日本化学会,日本理科教育学会での学会発表,中学校での実践,株式会社ベネッセコーポレーションとの連携,東京書籍との連携などの実績を挙げ,現行指導要領で復活したイオンを学習するための教材開発,新たな植物からのアントシアニンの抽出,植物の保存性の向上などの新たな試みの端緒についた。また,本事業成果を社会に還元する「ひらめき☆ときめきサイエンス」事業が採択され小学生を対象として開発した教材を使った授業を実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで,植物からのアントシアニンの抽出は生葉や冷凍食品などが用いられてきた。本研究では,取り扱いをより簡便にするため,現在乾燥葉を用いた手法について検討を行っている。乾燥葉は,常温下でも腐敗せず容易に保存ができること,またアントシアニンの抽出が極めて容易であることの2点について優れた性質を示すことがわかってきた。これらを教材として用いる方法について検討したい。また,様々な植物を栽培して,アントシアニンを抽出し,その手法と教材としての可能性,および抽出されるアントシアニジン構造について検討したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度が学生の研究引き継ぎ年度に辺り,研究の進捗に空白が生じたことにより,予算消化速度が計画と異なった。学生の研究理解度の向上と研究の進捗を勘案して,次年度へ予算を繰り越すことで,研究費の有効な活用を計画したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
植物の栽培における光と熱の重要性についても検討したい。そのために赤外線モニターおよびミニ分光器の購入を計画している。
|