アントシアニンを抽出する植物の保存性を向上させるために,植物を乾燥させることによるアントシアニンの分解について検討した。乾燥させる利点は以下の通りである。(1)植物から水分が抜けることでカビの発生などの腐敗が進行しないため,開放条件下でも保管が可能である。(2)質量が軽くなり,体積が小さくなることによって省スペースで保管が可能になる。(3)常温の水に投入するだけでアントシアニンが抽出可能になる。以上の利点を有効に活用するために,植物の種類と部位によって保存性がどの程度向上するのか,またアントシアニンの抽出効率がどのように変化するのかを検討した。 具体的には,すでに論文で報告した紫カイワレ大根,教科書に掲載されるメジャーなムラサキキャベツのほか,ソライロアサガオ,アジサイについて,採取直後と乾燥後の保存性とアントシアニンの抽出量を比較した。その結果,葉からアントシアニンを抽出する紫カイワレ大根およびムラサキキャベツは乾燥によって,保存性が著しく向上し,水から良好にアントシアニンを抽出することが可能であった。一方,花弁から抽出するソライロアサガオでは乾燥による保存性の向上が認められず,また乾燥過程でアントシアニンが分解し,乾燥後にはアントシアニンが抽出できないことが明らかとなった。萼から抽出するアジサイは乾燥による保存性の向上は認められたが,ソライロアサガオと同様にアントシアニンが分解し,抽出ができなかった。 乾燥に用いる器具について,学校で用いやすい食品乾燥器を用いた乾燥について検討した。食品乾燥器は通信販売で,1台4000円程度で購入が可能であり,また乾燥時間も4~8時間程度であるため,学校現場で栽培した植物を乾燥させて保管することで,簡単に保管できる。 以上の結果より,粒子領域と生命領域の連携性を実感する教材としての開発が完了した。
|