研究課題/領域番号 |
25350208
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐藤 寛之 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (30452832)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 比喩的表現 / 科学的な思考・表現 / 類推的思考 / モデル構築 / 理科学習 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年に引き続き、理科学習における類推的思考の役割に関する基礎的研究や子どもが理科学習場面において表出させた比喩的表現から、子どもの科学的な思考の様態と科学概念構築過程における比喩的表現の役割について精査した。 今年度実施した研究からは、以下の知見が得られた。 小学校第4学年理科の「電池の働き」の授業実践で子どもが表出させた電流についてのモデルにおける表現からは、子どもは闇雲にモデルを描いているのではなく、学習問題に呼応する形でモデルにおける表現を変化させていることが理解できた。そして、その際に子どもがモデル中に表した粒は,自由電子のような粒子ではなく、電流の大小関係を表現の手段として便宜的に用いていることも改めて理解できた。一方で、2個の電池の並列つなぎで回路全体に流れる電流値と1個の電池で同様の回路を作った際に回路全体に流れる電流値が同じであるという授業で提示する事象についても、事象自体の理解はできても、概念的に理解するのは困難なため,子どもの電流モデルにおいては表現できる限界があることも示された。 上記の授業実践や第4学年の他の単元のモデル構築(イメージ図の作成)からも、理科学習においてモデル構築(イメージ図の作成)を求められる小学校第4学年の段階で、「自ら創造したモデルを他のモデルと比較し評価する(理解する)こと」や「モデル構築の活動そのものが対立するモデルの検証に役立つこと」を、教師が念頭に置き、子どもが考える場の設定が肝要であることが示された。 また、高等学校物理基礎での電気概念を深化・拡大させる場面でも、水流アナロジー等の比喩的表現を用いて子どもが合成抵抗値についての理解を深めていく発話の分析から、「モデルを構築することで子どもにとっても概念変換(更新)の必要性を自覚していく」ことが改めて明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に実施を予定していた研究内容は、授業方略の再検討、前年度に実施した小・中学校と高等学校の理科の物理・化学分野の評価の視点を明確にし、さらに生物分野・地学分野を加えた小・中学校と高等学校での授業実践によるデータ収集、事例研究で得られたデータの分析・評価、比喩的表現と科学的な思考の関連を検討する事例研究の実施であった。 授業実践におけるデータ収集とデータの分析・評価は、研究協力者の担当学年や担当科目等も鑑み、当初計画と学習単元に変更が生じたものの、必要なデータ等は収集可能な状況にあり、現在のところ、問題は生じていない。研究成果は口頭発表により公表してはいるが、論文等における公表に若干の遅れが生じているので、その点については改善を要する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、以下の方策を検討している。 1.子どもの理科学習場面での比喩的表現から科学的な思考を把握することを検討した事例研究の更なる実施。 2.これまでの事例研究とそこから見出された評価の視点をふまえた、小・中学校と高等学校の理科における授業実践事例(データ収集)とその評価・分析の実施。 3.これまでの研究成果を発表することで学術論文として公表することと、研究期間内の研究について総括するための情報の取集と研究成果の再評価等の実施。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動に伴い、物品の管理が滞りなくできる体制を整えるまでは、前年度と同様に授業実践を行う研究協力者が必要とする最小限の物品を購入することにしたため。 また、研究打合せや成果発表等に必要な旅費が当初予定よりも必要となることが予想されるため、必要な金額を算出し、次年度に旅費として支出することにしたため。 上記2点が、次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
備品等の管理がスムーズにできる状態になったので、当初の計画に沿い、研究環境の整備に努める。購入を予定していた物品を精査したうえで購入し、打合せや研究発表における旅費を当初計画より増額したうえで,研究目的に合わせて執行する。
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