研究課題/領域番号 |
25350211
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
本郷 健 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (60245298)
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研究分担者 |
本村 猛能 群馬大学, 教育学部, 教授 (70239581)
山本 利一 埼玉大学, 教育学部, 教授 (80334142)
永井 克昇 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター, 教育課程調査官 (60370087)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 共通教科情報科 / 情報的な見方・考え方 / 情報教育 / カリキュラム / Computing / 教科固有の能力 / 情報科教育 / 設計科学 |
研究実績の概要 |
情報的な見方・考え方の枠組みを提案するにあたり、イギリスのナショナルカリキュラムの動向を王立協会のプロジェクト研究報告書を中心に読み解いた。ICTからComputingへ大きく変更になった考え方を読み解き、我が国の今後の情報教育の方向性への知見を得ることができた。これらの知見は日本教育情報学会の論文(第30巻3号掲載予定)としてまとめた。 情報的な見方・考え方を提案する前提として、教科教育における見方・考え方について、算数・数学科及び理科を通して整理した。結果、これら伝統的な教科では指導要領上の時代の変遷において、強弱の違いがあるものの、常に教科の教育目標の重要な中心的な概念を支えていることを確認した。共通教科情報科の見方・考え方の教育目標上における位置づけは、「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」が論点整理としてまとめた報告書や、日本学術会議が進めている「大学の分野別教育課程(学部専門課程)編成上の参照基準」を参考にして、汎用的なスキルではなく、その教科や学問分野を学ぶことによって獲得されるべき固有の能力と捉えることとした。 構造は、日本学術会議が提案する認識科学や設計科学の2領域を基礎として、各領域の下に育成したい資質・能力を配置した。具体的な学習内容は、各資質・能力領域の下に配置される。この観点は、イギリスのナショナル・カリキュラム「Computing」を構築するための考え方としてまとめられた先の報告書にも見られる視点である。 現在提案している「情報的な見方・考え方」は、「①情報を軸として事象を捉えるために、また、②情報を介して人工物(制度・方策等を含む)を案出して新たな価値を生むために、情報に関わる知識や技能などを駆り出す原動力」とする。前半①が認識科学を意図し、後半②が設計科学を意図した表現である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イギリスナショナルカリキュラムの考え方を我が国の情報教育への知見としてまとめたことは意義がある成果と考えている。特に、王立協会がまとめた報告書”Shut down or restart? The way forward for computing in UK schools”は、2014年度版のナショナルカリキュラムを考える上で貴重であるばかりでなく、現在世界的潮流となっている汎用的能力育成重視の考え方に対して、一石を投じる方向性を示している。イギリスは、世界に先駆けて汎用的スキルの育成をめざし、特にICTはその中心的教科として一翼を担っていた。しかし、その振り戻しとして、新しい教科である「Computing」では、教科固有の能力の形成を重視してきている。我が国のこれからの情報教育を考える上で大変示唆に富む内容を確認できた。この方向性は我々の提案しようとする「情報的な見方・考え方」と同じ方向性を示すものであり、基本的な考え方のモデルを手に入れることができた。このことによって、当年度の研究目的の60%程度は、達成できたと考えている。 「情報的な見方・考え方」の構成図の資質・能力の中心概念の提案は、第一段として提案できるレベルまでまとめることができた。また、その内容については、高校の先生方の意見を参考にしながら、初回の内容を提案することができた。これらの構成図は、教育系の学会で報告し、現在論文として投稿中である。 このような状況から、判定の観点としての(1)基本的な考え方の構築、(2)情報的な見方・考え方の定義の提出、(3)具体的な構想図の提案、などに照らし合わせて、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
当年度で提案した「情報的な見方・考え方」を論文として完成させるとともに、広くその考え方の普及を図る。今年度は、情報的な見方・考え方を構成する能力あるいは中心概念について提案できたため、今後はそれらの枠組みに合わせた、具体的な学習内容を提案する必要がある。当面は、現行の情報科の内容を組み入れることから始める。その後に新たな学習内容の提案を行う予定である。 次に、提案した考え方に基づく学習内容をカリキュラムとして体系化するモデルを提案する。新たに付け加える内容として、例えば、分散処理的な考え方はコンピュータならではの考え方であり、「情報的な見方・考え方」の新しい領域として魅力的である。情報ガバナンスの考え方は、本研究で提案した見方・考え方ではあるが、まだ普及しているとは云えない。そこで、具体的な教材の開発を進める予定である。 また、近年、プログラミング教育を義務教育から導入する動きがある。プログラミング教育が教育的にどのような意味があるかを「情報的な見方・考え方」の観点から位置づけする必要がある。また、小学校から高等学校あるいは大学の学部教育の入門レベルまでのプログラミング教育の体系化も検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた会議費の内で、特に会場費の費用が少なく実施することができた。会場を近隣の勤務校で行えたことがその主な理由である。学会誌への投稿費と論文増刷り費等の支払いが来年度に延びたために生じた。 また、分担者の物品の購入も無かったために残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に投稿した学会誌の増す刷り費の支払いが来年度になるため、その支出に当てる。 手書き入力のできるタブレットPCを購入する予定である。また、会議を頻繁に行う予定であるので、その会場費へ当てる必要がある。
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