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2013 年度 実施状況報告書

大学全入時代の物理学基礎教育の新展開

研究課題

研究課題/領域番号 25350215
研究種目

基盤研究(C)

研究機関久留米工業大学

研究代表者

巨海 玄道  久留米工業大学, 工学部, 教授 (00111146)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード大学全入 / 基礎学力 / 物理教育 / 学力の背景 / 高校履修科目 / カリキュラム
研究概要

現在、我が国の18歳人口の50%超が大学へ進学している。これは全受験者の90%を超える。即ち近い将来希望する受験生は全て入学できる「大学全入時代」を迎えるものと考えられている。この場合に大きな問題となるのは初等・中等教育での学力が十分でない学生が入学してくることである。その割合は確実に増加の一途をたどっている。これからの全入時代においてはこのような学生の基礎学力の確保とそれを可能にする教育体制の構築が必要であろう。
申請者はこれまで物理学の初年次教育について理工系学生の学習形態や基礎学力などを調査研究してきた。その結果は要約すれば大学生の基礎学力は初等・中等教育での基礎的な勉強に強く依存していることを指摘してきた。
本研究の目的はこのような成果を基にして、近い将来全入あるいはそれに近いと予想される大学で知識・情報を教える側が共有することにより、問題点を探り、物理学の基礎教育における新たな指導体制やカリキュラムの創成をする一助にすることを計画した。初年次教育は入学後の1年が1番重要と言われている。このような考えに立ち、本研究ははじめにいくつかの大学において入学直後の学生の基礎学力の調査と高校時代の教育との関連を明らかにするため高校時代の履修科目の調査を行った。これらを基に新入生の知的な背景を探り、それに適応する物理学講義・実験の内容を検討し、全入大学における基礎教育システムを構築することとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初めにいくつかの大学(国立大学を含む)において入学後の学生の基礎学力と高校時代の履修科目の調査を行った。これらは膨大な資料となったがアルバイト等を雇用し、解析を行った結果以下の成果を得た。
1)大学間で成績に大きな差が出た。これらの結果は大まかに見て予備校などが出している入試の偏差値を反映したものであった。物理学の場合、使用する教科書の内容や学生実験のテーマなどについてこの差を考慮することが必要となった。
2)入学後の成績は高校時代の履修科目の数に比例している。これは端的にいえば高校時代よく勉強していた学生は大学へ入学後もよく勉強する傾向があり、また入学後の成績が良いことも期待できるということである。しかし他方そうでない学生が多く入学する全入大学においてはその指導は大変重要となってくる。国立大学あるいは高偏差値の大学とは根本的に違った教育体制を敷くことが肝要となってくる。
3)物理学の基礎学力が不足している学生は数学や他の自然科学分野(生物や化学など)や一般的な社会科学分野、文系科学分野においても(いわゆるジェネリックスキルにおいて)大きく立ち遅れていることは調査結果として判明した。このことは学生としての資質に深く根ざしていると思われるため、全入大学においてはこの点も視野に入れた総合的な基礎教育のシステムの構築が必要であることが判明した。
4)年度末に研究会を開催した。この研究会には物理関係者のみならず社会科学系の研究者にも参加していただき、ジェネリックスキルやグローバルな視点からこの問題に取り組むことが重要であるという認識を強くした。

今後の研究の推進方策

今後の研究は以下の側面から推進していこうと考えている。
1)基礎学力の調査と入学後の半年ないし1年後の成績との関連を調べる。つまりどのような学習スタイルあるいは生活スタイルを持つ学生が入学後の成績が伸びるのかについて情報を得たい。また偏差値の異なる大学間でどのような違いがあるかも検討する。
2)1年目の調査研究から得た事実の一つに全入大学における基礎学力の養成は週に1回90分の授業では無理である(短すぎる)ことが判明した。このため小テストや中間テストの成績を基に成績下位集団の学生を割り出し、大変難しいのであるが「物理駆け込み寺」を作り指導に当たることとした。昨年の試行的なクラスの結果から、この駆け込み寺はよい成果を生み出すことが報告されている。
3)研究会を広く開催することにより特に高校の教員との交流を図り、広い観点から物理教育のカリキュラムを作成してみたい。幸い申請者が昨年から創設に取り掛かった「物理教育学会九州支部」も設立されそのような体制はさらに助長されるものと期待している。
4)連携研究者との情報交換や協力体制を築くことにより、各大学の物理教育の現状と今後について話し合い、よりよいカリキュラムの創製に取り組みたいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

当該年度に予定した学外での調査研究が相手方の都合でできなかったのでその分の旅費が次年度に繰り越されることとなった。またその分のデータが取れなかったので資料整理のための謝金も繰り越されることとなった。
海外での初年次教育の調査研究及びそれにより得られた資料の整理のための学生に対する謝金に使用する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Effect of Pressure and Ion Beam Irradiation on the Giant Magnetoresistance of Fe/Cr Magnetic Multilayers2014

    • 著者名/発表者名
      G.Oomi et.al.
    • 雑誌名

      IEEE TRANSACTIONS of MAGNETICS

      巻: 50 ページ: 1,4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 大学全入時代の物理学一般教育ーその背景と実践2014

    • 著者名/発表者名
      巨海玄道、猪飼秀隆
    • 雑誌名

      第62回九州地区一般教育研究協議会議事録

      巻: 62 ページ: 1,8

  • [雑誌論文] Pressure-induced Giant Magnetoresistance in Fe/Cr Magnetic Multilayers2013

    • 著者名/発表者名
      G.Oomi et.al.
    • 雑誌名

      J.Korean Physical Society

      巻: 62 ページ: 1929,1932

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 複合極限下における物性測定装置開発とそれを用いた特異な電子状態を持つ物質の電子物性の解明2013

    • 著者名/発表者名
      巨海玄道
    • 雑誌名

      高圧力の科学と技術

      巻: 23 ページ: 148,156

    • 査読あり
  • [学会発表] 久留米工大における物理駆け込み寺の試み2013

    • 著者名/発表者名
      巨海玄道
    • 学会等名
      日本物理学会九州支部講演会
    • 発表場所
      久留米工大
    • 年月日
      20131130-20131130
  • [学会発表] 圧力技術を用いた落ち葉ペレット材の創製2013

    • 著者名/発表者名
      原田翔平、巨海玄道
    • 学会等名
      日本高圧力学会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟)
    • 年月日
      20131114-20131116
  • [学会発表] 全入大学における物理基礎教育の現状と展開II2013

    • 著者名/発表者名
      巨海玄道
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      徳島大学
    • 年月日
      20130925-20130928
  • [学会発表] 全入大学における物理基礎教育の展開とその背景2013

    • 著者名/発表者名
      巨海玄道
    • 学会等名
      日本物理教育学会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      20130810-20130811
  • [図書] 万人の基礎物理学2013

    • 著者名/発表者名
      巨海玄道、野田常雄、上床美也、酒井健、中西剛司
    • 総ページ数
      244
    • 出版者
      学術図書出版社

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公開日: 2015-05-28  

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