本研究では、地域的な環境問題を抱える地域をモデルとして、ESD(持続可能な未来のための教育)における協同的社会参加モデルの適用とそれを促す形成的評価によって、地域的な環境問題の解決と地域の持続可能性向上をはかることができるかどうか、それらの有効性について検討した。その結果、協同的社会参加モデルは地域の持続性向上を理想とする形成的評価によって促すことができた。このようなアプローチの適用によって、モデル地域となった渡島大沼国定公園では、毎年、国際ボランティアによるワークキャンプの環境改善活動プログラム、地元高校生による青年環境サミットを実施し、地元の大学生による環境保全研究を企画、立案して成果をあげることができた。それによって地元自治体は当該地域を国際ラムサール条約の保護湿地として登録することに成功した。このことはモデル地域の自然環境保全と賢明な利用に責任をもつラムサール協議会の結成を促した。さらに、応用モデル地域として外来種問題を抱える地域と木質バイオマスの再生可能エネルギー利用による地域持続性の確保を目指している2つの自治体を選定し、ESDによる協同的社会参加とそれを促す形成的評価モデルの応用を試み、環境保全の指標の選定と持続性の指標の選定および問題解決と持続性向上の展望を得ることができた。以上の成果は、地域の環境問題の解決と持続性確保のための穏健で柔軟な新たなアプローチを提案するものと言える。
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