研究課題/領域番号 |
25350237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 広美 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50401708)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大型科学 / 大型施設 / ネットワーク型科学 / 科学コミュニケーション / 科学技術政策 / 巨大科学 / 冷戦 / 科学者の情報発信 |
研究概要 |
初年度は現代における1)大型科学の概要を一望するためのデータ集め、2)大型科学はいつコミュニケーション活動を行うべきか、の2点について主に研究科圧胴を行った。 1)についてはすでに、「ビッグサイエンスをいかにすすめるべきか ~科学コミュニケーションの立場から~」 情報の科学と技術 63巻11号 (2013) p464-469 にまとめてある。20世紀型の大型施設を基にしたい大型科学が、21世紀になり、生物系をはじめとする大型施設を伴わない「ネットワーク型」科学に発展し、あらたに「第2次巨大科学の時代」ともいうべき時代になったことをまとめた。 20世紀型の大型科学は、冷戦を背景に巨大な資金投資が可能な枠組みの中で進んだ。しかし冷戦崩壊後、実利を求める風潮の中で、大型科学は投資する側にとって、効率の悪い科学である可能性は否めない。特に基礎科学分野では、どこまで大型になることができるのであろうか。本研究は、現在、議論が進行している、これまでに日本が運営した大型科学では類を見ない1兆円スケール(日本負担は半分と言われている)大型科学「国際リニアコライダー」の議論にも貢献が期待できる。 2)においては、すでにデータは集め、共同研究者と共にデータは解析済みである。社会心理学の視点からの指摘も含め、26年度中に論文出版を予定している。大型科学と社会の関係を調べるため、ウェブ調査会社を用いて広い調査を行った。ウェブを用いることのバイアスは他論文でも指摘されているが、ウェブ調査はそれを超える有利な面があり、出版に向けて論文執筆を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は研究の方向性を検討し、調査を実施した。これまでの実績と合わせて、研究の手法上、ウェブ調査を選び、大型科学の情報発信をいつの段階でどのように行うべきか、あるいは実際に動いている科学技術政策に照らし合わせてどのようにすべきかを検討したのは、日本の今後の科学技術政策に資する内容であり、次年度の論文作成に向けて考察を続けていく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
最初に、初年度にまとめたデータの論文執筆を行う。 初年度である2013年度は、国際リニアコライダーの国内での議論が大きく進展した年であった。特に、日本学術会議が政府の依頼により審議を行い、国際リニアコライダーの日本誘致は時期尚早と述べたことは、行政に大きなインパクトを与え、社会全般にも注目を浴びた。 懸念するのは、誘致を行う地元が、政府からの資金がおちるプロジェクトと見なし誘致合戦を繰り広げたことである。大型科学を誘致する本来の意味で、国民全体が誘致を支持するか否かの議論は、地元とは別の議論であろう。こうした時事的な問題を扱うためにも、予定していた実際に人を集めて調査を行う方式ではなく、別の方式で調査を行うことを検討している。
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