研究課題/領域番号 |
25350239
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
伊藤 大輔 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究教員 (90436759)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 科学教育 / 産業・技術教育 / 実験教育 / マイクロスケール実験 / 腐食防食工学 / リカレント教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、マイクロスケール実験を適用させた理工系技術者に対する即効性実験教育教材の開発及びその実施による教育効果の検証を目的とする。教育対象分野は、様々な産業分野で求められている設計、材料選定、メンテナンス等の業務で必要となる「金属の腐食・防食工学」である。腐食現象に関して、「腐食原因を見つける方法」、「腐食の程度を知る方法」、「腐食を防ぐ方法」の3点を効率的かつ即効的に理解できる教育カリキュラムとその内容の理解を深めるために時間や場所を選ばず必要な時に自らが学習できるマイクロスケール実験教育教材の開発を行うと共に、教育講座の実施及び教育効果の検証を行い新しい技術者教育システムの確立を目指す。本年度の成果を以下に述べる。
(1)アンケート・聞き取り調査内容・解析方法の検討:一般的に調査されている内容全体の理解度や講座全体の意見ではなく、各実験毎の理解度やその有用性に関して、問題等の記述式アンケートを作成した。また、実験教材に関して、1人1つが必要か否かを設問に加えた。昨年講座を実施した受講生に対して、実験後の追跡調査として、直接意見を聞く面談を実施し、知識の実現場への適用に関して調査した。 (2)海外の大学における治金・金属技術者対象実験講座の実施及びアンケート・聞き取り調査:講座の実施には至らなかったが、他国の技術者・研究者・学生の意見を多く収集できた。その結果、本実験システムは、腐食分野に専門ではない人の知識の習得に、非常に効率良く充実した内容であることが分かった。また、マイクロスケール化したことで、自立学習や社内における教育教材への適用性が高いことが分かった。
今後は、開発した教材で講座を実施し教育効果の実証を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の進捗状況に関して、項目毎に述べる。 (1)アンケート・聞き取り調査内容・解析方法の検討:アンケート調査内容に関しては、受講前、受講後の設問を設け、実験毎に詳しく回答できる形式で完成している。また、講座を実施した受講生に対する実験後の追跡調査に関しても、直接意見を聞く面談方法により実施した。しかし、未だ調査件数が少ないため、総合的な考察には至っていない。
(2)海外の大学における治金・金属技術者対象実験講座の実施及びアンケート・聞き取り調査:本年度、講座の実施には至らなかったため、今後実施する計画である。実験テキスト・手順書の英語版作成は進んでおり、講座実施に向けての準備は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の課題を設定し行う計画である。
(1)マイクロスケール化教材の教育効果の実証:マイクロスケール化した教材に関する教育効果の実証に関して、横浜国立大学主催公開講座(2講座)、技術者向け出張講座(2か所)を行い、それぞれの対象者の教育効果、その必要・妥当性を詳細に検証する。実施後には、アンケート・聞き取り調査を行う。 (2)教育効果の解析と教育プログラムの体系化:これまでに行ったアンケートおよび聞き取り調査の意見を解析することにより、講座の試行問題点、改善点等を抽出し実験内容、キットに修正を加え教育効果の高いモデルを作り上げていく。さらに、技術者向けマイクロスケール実験教育の体系化を行い、他分野の産業教育・技術者教育における教育教材の開発方法を提案する。 (3)大学1年次他学科向け化学基礎実験のマイクロスケール化:本テーマで検討した実験教材のマイクロスケール化を既存の化学基礎実験へ応用する。大学1年次他学科向け化学基礎実験では、最低限必要な化学的知識を学習するプログラムがあるが、実験教材およびテキストは、当然化学を専門とする教員が作製している。しかし、初学者向け教材としては不十分な部分がある。そこで、本テーマで実施した初学者向け実験教材の開発方法を適用させ、内容の本質を効率良く理解出来る教材を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施できなかった実験講座のための予算を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算と当初次年度予算とを合わせて、実験講座を2か所実施する計画である。
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