本研究は、技術者向け実験教育のためのマイクロスケール実験教材の開発およびその教育効果の検討を目的とした。教育対象分野は、様々な産業分野で求められている設計、材料選定、メンテナンス等の業務で必要となる「金属の腐食・防食工学」である。腐食現象に関して、「腐食原因を見つける方法」、「腐食の程度を知る方法」、「腐食を防ぐ方法」の3点を効率的かつ即効的に理解できる教育カリキュラムとその内容の理解を深めるために時間や場所を選ばず必要な時に自らが学習できるマイクロスケール実験教育教材の開発を行うと共に、教育講座の実施及び教育効果の検証を行い、新しい技術者教育システムの確立を目指した。 【最終年度の成果】(1)マイクロスケール実験教材試行に関する教育効果の解析:これまでに作製した腐食防食教育用マイクロスケール実験教材を用いて、数カ所の事業体の現場技術者に対して実験講座を実施した。教育効果、その必要・妥当性を実施後のアンケートにより調査した。その結果、ほぼすべての受講生が「実験自体は必要である」、「実験により理解が確実に深まる」と答えた。また「実験教材が1人1つ必要か」という問いに、多くが「数人で1つが妥当である」と答えた。(2)教育プログラムの体系化:(1)の成果を基に他テーマへの応用が考えられる。その適用要件をまとめる。①講義形態は講義時間と実験時間を分けるのではなく一体化させ進行する。②講義時間は最大でも6時間程度(1日)で完結する内容が最大の教育効果を得られる。 ③実験教材は簡易で入手しやすいものを使い可能な限りマイクロスケール化させる。 【3年間の成果】本研究は、技術者が個人で学習できるマイクロスケール実験教育プログラムの開発を行い、その教育効果を検証した。開発した教育教材は、世界初であり、またその効果や適用性検討の成果は、様々な産業分野で広範な展開が期待できる。
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