研究課題/領域番号 |
25350241
|
研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
石井 恭子 玉川大学, 教育学部, 教授 (50467130)
|
研究分担者 |
山田 吉英 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (30588570)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | アクティブラーニング / 国際情報交換USA |
研究実績の概要 |
本研究は、科学的探究によって児童生徒が理解を深める授業の実現に向けて、海外ですでに多くの成果の出ているActive Learningの一つである“Physics by Inquiry”の理念、授業方法を、小・中・高・大教員の協働研究によって検討し、日本における活用可能性を検討し、新たなプログラム開発のためのシステムを開発する。学習内容の深い理解と科学的概念の形成を目指した研究をするために、個々の学校種での研究にとどまらず、小・中・高・大の教員の継続的な協働研究を行う。平成26年度までに以下の3点について研究を進めた。 ①平成26年3月のWashington大学調査により、探究プログラム“Physics by Inquiry”の開発は、大学学部授業およびSummer Instituteの実践によって改訂を繰り返していること、小・中・高等学校におけるカリキュラム開発は個々の学校教員による実践とその交流による継続的な実践研究が重要であることを確認した。 ②平成25年度より、福井大学と福井県の小学校・中学校・高等学校教員で継続的な協働実践研究を行うFukui Active Learning研究会を構築した。 小学校・中学校・高等学校・大学において共通に実践可能な電気の領域に焦点を当て、“Physics by Inquiry”の暫定版翻訳プログラムを作成し実践的に検討し、日本における探究型の授業のあり方を検討した。 ③暫定版翻訳プログラム検討と議論を踏まえ、個々の教員による試行実践を行い、日本型の探究プログラムの開発に向けて教材開発と実践研究を繰り返している。授業現場から離れて開発したプログラムを実践するよりも、授業実践と実践分析を繰り返し、プログラムを改訂し続けることが重要なプロセスであることが明らかであるため、本研究においても、実践に基づいてカリキュラムを開発する方針で進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、以下の研究を行った。 ①実地調査およびカリキュラム調査 平成26年3月に行ったWashington大学への訪問調査に基づき、福井大学において、教員養成学部学生と修士課程大学院生によるTAの積極的な活用によるプログラム開発と実践研究を進めた。プログラム開発においては、物理の内容に関する深い理解と認知科学や教育学に関する知見が必要であることを確認し、大学においても教員の協働研究が重要であることを確認した。“Physics by Inquiry”カリキュラムとの比較検討のために日本のカリキュラムの歴史的変遷を検討し、物理教育に報告した(石井、2014 )。大学学部における試行実践の結果をICPEで報告した(Ishii,2014)。 ②探究プログラム開発と実践研究 Fukui Active Learning研究会を継続的に開催し、各学校種における現在の課題を共有するともに、“Physics by Inquiry”の電気回路領域の暫定版翻訳プログラムを作成し、日本の教育課程との整合性、活用可能性を検討した。各学校種において、個々の教員による自発的な授業実践が円滑に行えるよう、研究会と平行してFacebookなどによる継続的な交流を積極的に進めた。 ③開発プログラムの実践と改善研究 電気回路領域の暫定版翻訳プログラムを検討し、試行実践を行った。福井大学教育地域科学部、勝山市鹿谷小学校、福井市豊小学校、大野市陽明中学校、鯖江市鯖江中学校などで、授業実践を行い、児童・生徒の学習の様子にもとづいてカリキュラムを再検討した。陽明中学校における実践については、物理教育学会誌において報告予定である。 また、チュートリアル形式の授業法とカリキュラム開発について2014年度物理学会においてシンポジウム講演(山田,2015)を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
実地調査や実践研究に基づき,“Physics by Inquiry”を始め様々な探究プログラムを検討しつつ小・中・高・大での協働実践研究を進め、児童生徒の理解を深める授業プログラムの開発を目指していく。本研究においては、プログラムを先に作成するのではなく、実践を積み重ねることによって日本の教育課程の中での活用可能性を検討する。福井大学における実践および地域教員との連携研究をさらに進める。 ①実地調査およびカリキュラム調査 “Physics by Inquiry”、“Tutorial in Introductory Physics”だけでなく、初等教育プログラムであるFOSSやCASEなど他のプログラムを検討し、実践している他大学や研究者との研究交流を進め,日本における活用の課題や可能性をさらに調査する。 ②探究プログラム開発と実践研究 “Physics by Inquiry”の暫定版翻訳プログラムの実践に基づいて、Active Learningプログラムの再検討を進める。活用可能性を高めるために、Fukui Active Learning 研究会を中心に、さらなる実践を繰り返し、学会等での評価・見直しを通じて実験とワークシートの開発をさらに進める。 ③開発プログラム改善研究と研究のまとめ Fukui Active Learning 研究会を中心に、授業や教員研修などにおいてさらに試行実践を行い、開発プログラムの成果や課題を検討する。小・中・高・大における実践事例をまとめ、評価・見直しを通じた開発プログラムの検証を行う。見出された課題について、さらに実践的検討を加え、暫定版Active Learningガイドブックを作成して福井県内外の教員で共有し、評価・見直しを行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、アメリカwashington大学のsummer instituteへの参加を計画していたが、3月の調査研究により、予定していた調査内容がほぼ確認できたため、次年度の学会発表の旅費や報告書まとめの費用に転用することにしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
アメリカにおけるJUSTEC(日米教師教育研究会)への研究代表者の参加、および、試行実践のための教材や実践交流会の費用、また教員の学会発表旅費に当てる予定である。
|