最終年度では、1)これまでの野外調査を継続するとともに、2)樹木群集の推移予測、炭素固定速度と蓄積量の推移予測、種子散布相互作用系の推移予測のそれぞれについて全成果を取りまとめ、3)人間の利用低下に伴う生物多様性の変化について学習できるモデルを作成することが、当初からの計画である。1)については、静岡市内と愛知県西部の各調査区における樹木センサスを継続して実施し、モデル作成に必要な基礎データの収集を完了した。また、哺乳類と鳥類の群集の変化を把握するために、カメラトラップ法による調査も継続し、森林の構造によって哺乳類・鳥類の構成が異なることを示すデータを得ることができた。さらに、堅果を中心とした種子散布相互作用系の変化を観測し、それに関して学習できる内容と教材を開発するために必要なデータを収集した。2)については、平成25~27年度に取りまとめた成果に加えて、森林棲のアカネズミによる堅果の選択や運ばれた堅果の空間分布が里山の森林構造によって異なることを明らかにし、学校教育における探究活動で使用できるデータベースを作成した。また、哺乳類や地上棲鳥類の群集組成も里山の森林タイプに影響されることも明らかにし、これについても教材開発に結びつく基礎資料としてまとめることができた。3)については、平成27年度までに、樹木群集の推移、炭素固定速度と蓄積量の推移については学習モデルを具体的に示して原著論文および著書で公表し、その実践を行なった成果も原著論文として公表した。さらに、最終年度において堅果を対象とした種子散布相互作用系に関する学習モデルも考案し、里山生態系における生物多様性の構造と変化を能動的に学習する総合的なモデルを構成することができた。原著論文として公表した成果は、静岡大学学術リポジトリに登録して自由に全文ダウンロードできるようにし、学内外に広く発信・提供している。
|