研究課題/領域番号 |
25350257
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
正元 和盛 熊本大学, 教育学部, 教授 (60136702)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 初中等教育(理科) / 実験・観察 / 科学教育カリキュラム / 環境教育 |
研究実績の概要 |
系統的に小・中学校理科「生命」領域を理解するためには、生物機能と環境についての納得理解のための教材素材開発と厳選されたそれらを組み込んだカリキュラム構築が必要だと考える。そのような「生命」領域教材素材開発として、今年度以下のような実験系開発を試みた。 1.植物での熱エネルギーの流れとしての蒸散機能の測定 植物での蒸散機能の測定について、ワセリン法にかわって葉面密閉法が効率的であるので、更に改良を加え、アジサイ葉裏面1/4ずつでの葉面密閉による葉温差を赤外線サーモグラフィー装置で測定し検証した.同じ事を、現行小中学校教材の放射温度計でも測定可能であった.蒸散による冷却効果の根拠づけをより明確にできる。また葉温測定後,葉片での光合成産物デンプン検出もたたき染め法で示すことができた。中学校理科生命領域では,光合成場葉緑体の機能確認素材としてオオカナダモを使用するが,代替えとしてヒャクニチソウ葉単離細胞中の葉緑体デンプン観察を顕微鏡で確認する実験系を開発した.これらのことは,植物機能を児童生徒自らが測定し,結果を関連付けながら総合的に理解する,課題解決教材として有効性が高い事を示唆する. 2.生物作用によるCO2濃度変化測定 「生命」領域炭素循環には、土微生物の代謝機能(発酵・呼吸)の理解のための実験が欠かせない.チャック付ポリ袋中のシャーレ土での代用デンプン添加によるCO2濃度変化を測定した.密閉実験セットの小型化、簡易化ができ,添加水量とラグタイム、温度設定などの条件確定ができた.CO2濃度測定は、業務用の二酸化炭素測定ノードによる測定と同様に、学校教材のデジタル気体測定器や気体検知管でも測定できた.また土の硝酸イオン濃度もパックテストまたは試験紙でできた。このことは、児童生徒自らによる土微生物の働きの「見える化実験」が可能であることを示す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
根拠理由付けを重視した科学的思考力育成のためには、また納得理解のためには、児童生徒自らが実施でき簡便かつ平易な教科書実験やその発展実験の重要性が増してくる.その実験系の確立には、現在学校現場で使用されている教材機器で実施でき、かつ「生命」領域での共通性、系統性の理解を深める実験系開発が必須と考えるし、現場教師の参考になると考える。本研究ではその様な実験系開発を試みて、それなりの成果を得ている.発展としての樹木での蒸散熱放射に関する実験系や、また更なる、機能「見える化実験」系開発は今後の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
系統的に小・中学校理科「生命」領域を理解するためには、生物機能と環境についての納得理解のための教材素材開発と厳選されたそれらを組み込んだカリキュラム構築が必要だと考える。納得理解が知識技能の定着を保証し、活用の幅を広げると考えている.そのためには「生命」領域の「本質的な問い」を課題にしうる教材素材の開発が重要だし,課題解決学習をとおした思考力育成にも寄与しうると考えている.児童・生徒が、学び方を学び、学びの質を高める「生命」領域教材素材実験系開発を次年度も続けていく.
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