研究課題/領域番号 |
25350263
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
坪田 幸政 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (70406859)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 気候 / 気候リテラシー / 気候変動 / 気候予測 / 天気予報 / 国際比較 |
研究概要 |
気候リテラシーに関する取り組みについては,NASA/GISSで開催されたCLIMATE CHANGE IN THE CLASSROOM SUMMER 2013 TEACHERS WORKSHOPには参加し,またCourseraで公開されたBritish Columbia大の"Climate Literacy: Navigating Climate Change Conversation",メルボルン大の"Climate Change", World Bankの"Turn Down the Heat"を履修し,体験的に調査した.その結果,気候リテラシーの取り組みは,その企画者の専門や目的によって多様であることがわかった.一方,これらのコースで共通していたのは,日本ではほとんど説明されない科学的な原理などがきちんと説明されていたことである.また,気候変動に対する緩和と適応についても,それらの方策と効果および実施状況などが具体的に説明されていた.これらの調査に基づき気候リテラシーを確立するためには,継続的に調査することが必要であるとの結論に至った. 気候リテラシーを育成するためのカリキュラム開発の一環として,日本学術振興会のひらめき☆ときめきサイエンス事業の支援を受けて高校生のための環境科学講座「大気科学の最先端~天気予報と気候変動~」を実施し,開発教材の効果測定を行った.その結果,「天気予報」と「気候予報」や「気候の変化」と「気候の変動性」の違い,「気候予測」における「不確実性」の理解増進などに難しさのあることがわかった.その背景には,気候の決定要因に対する理解,データの見方に関わる統計的な物の見方の基礎に問題があることが示唆された.気候と統計は,日本の初等・中等理数科教育の中核からは外れてしまった分野である.今後,これらの分野の能力を培う学習モジュールを開発することが必要であろう. 気象・気候WEBサイトについては,その運用を開始し,本研究の成果の一部は既に公開した.今後,順次コンテンツを充実して行く予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,①気候リテラシーの確立,②気候リテラシー育成のためのカリキュラム開発と指導者用マニュアルの作成,③気象・気候WEBサイトの開設・運用から構成される.気候変動教育の実践に関する研究は,未だ普遍的な気候リテラシーの確立には至っていない.特に気候リテラシーの範囲および各項目に対する深さについては,実践例毎にその対象や目的により異なっており,一意に確立することが難しいと判断され,継続調査の必要性が確認された.カリキュラム開発と指導者用マニュアルの作成に関する初年度の目標は,理科の枠組みで行ってきた気候変動教育を基礎としているので,ほぼ予定通り進んでいる.そして,その試行と評価は,日本学術振興会のひらめき☆ときめきサイエンスによる高校生のための環境科学講座「大気科学の最先端~天気予報と気候変動~」で実施した.気象・気候WEBサイトはその運用を開始し,既に一部の成果については公開している.また,本研究の成果の一部は,桜美林大学教員免許状更新講習センターから公開される2014年度のオンラインコース「教師に求められる大気環境リテラシー」(6時間)に含めることができ,また,神奈川県教育委員会が2014年3月15日に開催した高校生と高校教員を対象とした「第8回環境シンポジウム」における招待講演「これからのESD(持続可能な開発のための教育)について―いま私たちにできること―」の中で紹介することができた. 本研究の効果測定・広報普及の手段として,2014年度は教員向け研修講座サイエンス・リーダーズ・キャンプ(気候変動と再生可能エネルギーをテーマとした先端的実験・演習)での実施を計画し,実施機関として応募していたが,残念ながら不採択となり,研究成果を評価・普及する場を確保することできなかった.
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今後の研究の推進方策 |
IPCCの第5次評価報告書が2014年度に公表され,気候変動に対する興味関心が高まったと言える.しかし,第4次評価報告書との比較から,その作成手法や精度などに対する懐疑論が再燃している状況がある.この背景には,気候リテラシーに対する理解不足があると考えられ,特に天気予報との比較による気候予測への誤解がある.また,この傾向は一般市民よりも理科教員や気象予報士も含めた理系市民に強いと感じられる.このことは気候変動教育を普及する上での障害となる可能性がある.そこで,当初から検討していた気象予報士会との連携の手始めとして,神奈川気象予報士会において気候リテラシーに関する勉強会を企画して,実態の把握を目指す. 気候リテラシーの国際比較に関しては,引き続きCourseraで公開されているOnline Courseと欧州気象学会などを中心に調査していく.特にCourseraにおける気候変動関連コースでは,全世界からの聴講者による交流の場が提供され,様々な意見や情報が入手できる.また,米国における気候変動教育では,エール大学のYale Project On Climate Change Communicationが,米国における意識調査の結果を継続的に発表しており,貴重な情報源となっている.将来的な連携を視野に入れて,調査していく予定である.バングラデシュについては,2013年1月から小学5年生に導入された"Climate Change"の内容修正に関わることとなったので,2014年度中に修正案を提示すべく,初等教育における気候変動教育に関する調査研究を推進する.また,2014年度の外部発信について,本学環境研究所の活動,学会などにおけるワークショップなどを中心に検討して行く予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に購入した「サーモグラフィー一式」の支出額が,値引きにより当初の予定よりも少なくなり,年度末に20,045円の残予算がでた.サーモグラフィーの関連部品などでの支出も考えられたが,基金化されたことで次年度に持ち越すことが可能となったので,急いで支出することを控えたためである. 2014年でに本格的にサーモグラフィーを使用して行くので,その際に必要な関連部品を購入すために使用する.
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