研究課題/領域番号 |
25350266
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
吉田 善一 東洋大学, 理工学部, 教授 (50273032)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 技術者倫理教育 / ものづくり精神 / 東洋思想 / 社会人教育 / フィリピン / 国際研究者交流 |
研究概要 |
東洋大学とフィリピンのサンホセ・レコレトス大学(承諾済)は、カネパッケージ・フィリピン社(KPPI承諾済)の協力を得て、日本のモノづくり精神の考え方を基にしたフィリピンで製造業に従事する者の人材教育開発を行った。具体的な実施内容は、①既存教科書『Life in the Real World』の再編集、②本書による初級講座(講座1:Social Foundational Capability(社会人心得)、講座2:Maxims for Engineers(技術者心得)、講座3:Character Building(人格形成)とモノづくり精神を身に付けるワークショップ)の開発、③日系企業社員に対する初級講座の試験的実施、④初級講座を発展させた中級実証講座用の教科書『和の人間学』の開発、⑤日系企業社員に対する中級講座の試験的実施である。実績としては、平成26年3月1日にKPPIで初級講座を実施した。参加者は、KPPIと他の日系企業から45名で、管理職、リーダー、一般社員それぞれ15名であった。アンケート結果では、比較的高い評価が得られたが、リーダーと一般に比べ管理職が少し厳しい評価であった。記述欄では、毎年同様の講座を開催して欲しいとの意見が多くあった。また、平成25年8月1日にKPPIで中級講座「Asian economic dynamics and Eastern thought(日本・アジアの経済活動と東洋思想)」を実施した。初級講座の管理職と同様のアンケート結果が得られた。記述欄から、講義内容の重要性は認識されているが、英語版教科書が無いために理解できないところが多々あったことが分かった。両講座ともに、「仕事への活用」と「企業目標との一致」の項目が高い値を示し、自社の理念や社会貢献を理解することにある程度役立っており、当初目的である離職率防止にも役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の達成目標は、(1) 既存教材を用いて、フィリピンの大学の教授陣及び翻訳家との連携で教授方法を開発し、フィリピンの大学や企業で実証講義を実施し、課題抽出を行うこと、(2)既存『社会人力ノート』の内容を日本の伝統的精神から再考し、より深い内容の教材と教授法を開発することであった。 (1)に関しては、これまでの教授実績と内容再検討により、既存教科書『Life in the Real World』を再編集し、電子出版ができる教科書を開発した。それを基にした講座1:Social Foundational Capability(社会人心得)、講座2:Maxims for Engineers(技術者心得)、講座3:Character Building(人格形成)を開発し、フィリピンの日系企業従業員向けに実証講義を行った。また、この講義のアンケート結果を基に、課題を抽出することもできた。当初の予定通り順調に推進することができた。 (2)に関しては、日本のモノづくり精神などを詳しく研究し、(1)で行った初級講座を発展させた中級実証講座用の教材『和の人間学』を開発・執筆し、出版した。本書の副題は「東洋思想と日本の技術史から導く人格者の行動規範」であり、6つの章、「江戸の商人道から導き出せる人間力」「工人道から導き出せる人間力」「日本精神から導き出せる人間力」「行動規範を哲学する」「和魂洋才」「日本における科学・技術の形成」で構成されている。当初、次年度に行う予定であった執筆と出版に関しても完了した。本書の前半2つの章に対して教授法を開発し、「Asian economic dynamics and Eastern thought (日本・アジアの経済活動と東洋思想)」と題して、フィリピンの日系企業従業員向けに中級実証講義を行った。この項目は、当初の予定以上に順調に推進することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の平成26、27年度の実施計画は、(1)平成25年度に開発した『和の人間学』を中堅社員及び経営者向けの教材として執筆し、製本すること、(2)『和の人間学』の英語版を翻訳家や外国人大学教授と共同で執筆し、製本すること、(3)フィリピンの大学の教授陣と共に、英語版『和の人間学』を教材として、中堅エンジニアに有効な教授方法を開発し、フィリピンの企業で実証講義を実施し、課題抽出を行うこと、(4)日本のモノづくり精神が世界の人々と共通の土台となることを最終目標として、海外で実施できる研修コースを確立させることであった。しかし、(1)は平成25年度で既に完了しており、平成26年度は、(2)と(3)を中心に実施したい。また、これまでの実証講座や現地での調査から浮かび上がってきた初級講座をより簡単にした講座の必要性から、上記2項目に加え、新たに、天地自然の理を知るための既存教科書『ナノテクノロジーのとびら』の英語版の作製を行い、平成25年度に開発した初級講座と共にフィリピンのワーカーレベルの講座を開発する予定である。また、平成27年度は、計画通り(4)を実施する予定である。 よって、平成26年度の研究課題は、(a)初級講座をより分かりやすくしたワーカーレベルや学生に有効な教授法(超初級講座)を開発すること、(b)超初級講座用テキストとして『ナノテクノロジーのとびら』の英語版を翻訳家や外国人大学教授と共同で執筆し、製本すること、(c) 『和の人間学』の英語版教科書を作製すること、(d)英語版『和の人間学』を教材とした中堅社員及び経営者向けの中級講座を完成させることである。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、調査と実証講義のために、フィリピンへ6泊7日で2名海外出張を予定していたが、実証講座に関しては他機関からの支援が得られたため、それを使用した。調査に関しては、相手方との日程が合わず来年度(平成26年度)に実施することにした。 調査のために、フィリピンへ6泊7日で2名海外出張を平成26年度に新たに計上する。
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