東洋大学は2012年に創立125周年を迎え、その記念行事として「東洋大学版日本型モノづくり哲学のアジアへの発信」を本申請代表者が実施した。発信すべき内容は、古来日本のモノづくり思想(特に江戸時代)を研究し、その中から不変なものを抽出し、これからのモノづくりリーダーが伝承すべき項目である。その延長として、本基盤研究(C)(一般)「日本の伝統的なモノづくり精神を基盤とした技術者倫理教育手法の開発とその海外展開」がスタートし、 独自テキスト『Life in the Real World(社会人力ノート)』『An Introduction to Nanotechnology(ナノテクノロジーのとびら)』を開発し、フィリピンの日系企業で現地従業員向け講義を実施し、自社の理念を理解するための手助け、仕事に役立つなど高い評価を得た。本研究の実績は、過去に東洋大方式として国内で顕彰された技術者倫理教育手法を海外に拡張するとともに、教育効果を倍増させるため、社会人力、モノづくり力、実習研修、就職活動支援まで、一貫した先進的な取り組みをフィリピンで実証できたことである。また、受講生へのアンケート結果から、技術者倫理教育手法が、トヨタ生産方式など既存の人材育成プログラムの根底にあるモノづくり精神を学ばせる手法として有効であることが示されたことである。本研究の結果、①モノづくり人材の育成だけではなく、「こと」づくり人材の育成にも役立つことが分かった、②育成人材は、モノづくりだけではなく、イノベーションを起こす人材であり、経営者や起業家をも育成できることが分かった、③付加価値を持っている人材を育成できることが分かった。
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