研究課題/領域番号 |
25350272
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
西澤 岳夫 釧路工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (00300509)
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研究分担者 |
佐藤 彰治 釧路工業高等専門学校, 建築学科, 教授 (40141858)
森 太郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70312387)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トイチセ / チセ / アイヌ / 熱性能 / 実測 |
研究実績の概要 |
昨年度竣工したトイチセの覆土および芝の定着状況を確認した上で、引き続き温熱環境の測定と分析を行った。過年度竣工のチセについては、北海道大学アイヌ・先住民センターの北原次郎太准教授の助言に基づき、外壁外周部の土盛りを行い、隙間風の流入量減を試みた。 その他、同チセをモデルとした縮尺1/2の軸組キットを作成し模擬授業に活用した。このキットはこれまでの一人で組み立てる1/20キットとは違い、複数人で建設行程を追体験できる仕様になっているのが特徴である。 以下、上記温熱環境測定に関わる実績概要を示す。主な測定内容は、初夏期から冬期にかけての開放型灯油ストーブによる暖房時のチセ・トイチセ内の温湿度変化と学生と教員による宿泊体験時の温湿度、CO、CO2濃度である(薪による採暖)。実測結果としては、冬期暖房時の温度推移に顕著な特徴がみられた。具体的には、暖房終了直前が最高室温となり、トイチセはチセよりも上部で約24K、下部で約10K高くなり、チセは上下温度差が生じておらず明確な断熱性能の差が確認できた。また、暖房を停止した翌朝のトイチセ内温度は,上下共に外気温より5K程度高く保たれており、覆土による熱容量の増大効果がみられた。一方、チセは外気温とほぼ同じ温度まで低下しており、土盛りの効果は残念ながらみられなかった。また、一昨年に引き続き同様の宿泊体験を兼ねた温熱環境測定を12月下旬に行った。今年度の宿泊体験時では、CO、CO2濃度とも昨年度よりも全体的に低く、これは宿泊人数、トイチセの経年変化による熱損失の増大が影響しているものと推察される。しかしその一方、熱源付近と入口および壁隅付近では15K程度の大きな温度むらが生じてしまった。これは安全のため扉を常時開放していたことに起因するが、扉を閉じた状態での測定が可能となるよう、吸排気の改善をした上での更なる測定と分析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画のとおり、縮尺1/20サイズの教材キットの開発と同キットを用いた模擬授業(実施:平成27年12月17日 午前、参加者:学生8名)を行い、温熱環境測定については追加実験を実施、更なるデータの蓄積をすることができた。しかし、予定していた全ての温熱環境の実測を終えた1月以降、業務多忙により詳細なデータ分析をする時間を十分に確保することができず、全体を総括するには至らなかった。また、薪燃焼時の煤煙やCO、CO2濃度による空気質の悪化に対する解決策を導き出せず、更なる詳細な実験と分析の必要性も浮上した。
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今後の研究の推進方策 |
蓄積データの詳細な分析を行う他、トイチセの吸気口や排気口(煙出窓や天窓)に工夫を施し、薪燃焼時の空気質の改善を試みる。また、演算プログラムを用いて煙の動きをシミュレーションし、トイチセの室内環境の変化について分析を深める。なお、比較検討用として隣地に建設済みのチセについては、モセム(前室)部分を増築し、温熱環境の改善を試みる。なお、平成28年度は最終年度となることから、本研究の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の性質上、冬期の実測が必要であるが、平成27年度の温熱測定を終えた平成28年1月以降に業務が多忙になっため、詳細な分析および研究の総括を次年度に繰り越すこととした。このため、補足試験や分析、記録集作成などに関わる諸費用を次年度使用額として残すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に蓄積したデータを詳細に分析するとともに、チセおよびトイチセの改修を行い、補足的に実測データの積み重ねと更なる分析を行う。また、本研究の総括として記録集の作成等を行う。
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