27年度は本研究の最終年度であることから、重度の視覚障害を持つ学生や生徒が、XML(拡張可能マークアップ言語)の活用技法の基礎を、プレゼンテーション用の提示資料を触覚や聴覚を解して独力で作成する方法を通じて、実践的に学習する環境と、その教育を行うための方法を確立するとともに、関連の教材を整備した。 1 提示資料作成用ソフトウェアの完成:視覚を介さずに簡便かつ確実に提示資料を作成できるようにすることを目的に、前年度にDOM(Document Object Model)技術を用いて開発したソフトウェアを、視覚障害学生による試用で評価・改良し、次のような機能を持つものとして完成した。使用者は(1)各スライド(ページ)のレイアウトを、類型化されたパターンの中から選定する。(2)各レイアウト・パターンに対応付けて定められた構造のXML文書(要素名は任意)で提示内容を記述する。(3)属性値の指定でレイアウトを調整する。記述されたXML文書は、提示用のHTML文書に自動変換される。 2 教育方法の確立:視覚障害者を対象とする実践により、次のことを教育する方法を体系化した。(1)独力での完成度の高い提示資料の作成。(2)主体的なプレゼンテーションの実施。(3)XMLについての基礎知識。(4)XML活用の実際。 3 教材の整備:XMLの基礎や関連技術を視覚障害者に確実に教育できるようにするために、次のことを行った。(1)実用性を考慮した教材を点字版とテキストデータ版で作成し、視覚障害学生に対する教育で使用して評価・改良した。(2)点字出力や音声読み上げにも対応する視覚障害者用ワンソース・マルチユース学習資料をEPUB形式で作成する方法を確立した。(3)点字版教材の今後の供給を確保するために、その作成方法について主要な点訳ボランティアグループに周知した。
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