研究課題/領域番号 |
25350281
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
竹村 淳 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20297617)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 教育支援システム / VR / 実験教育 / 電子回路 |
研究概要 |
本研究は,ものづくり教育に不可欠である電子回路製作を含む実験教育を,様々な環境で行うことを可能にする新しいバーチャルリアリティ(virtual reality : VR) 技術である実体験追及型VR(experience-oriented virtual reality : XVR)を提案し,実験教育支援システムに応用することを目的とする。このXVRを実現するために,本研究では以下の4つのリアリティに関する技術要素を開発し,実験教育支援システムへの応用を試みる:(1) 観測的リアルティ,(2) 操作性リアリティ,(3) 製作的リアリティ, (4) 計測的リアリティ。平成25年度の研究では,「(1) 観測的リアリティ」に関する技術開発の研究を行った。一般に,科学技術系の実験教育では,対象物を外見だけでなく,その内部もよく観測し,構造を調べ理解することが重要なテーマである。このテーマをVRを用いた教育支援システムで実現することを「観測的リアリティ」という。しかし,従来のVR技術を用いた教育支援システムは,3次元画像などの表示技術を用いたシミュレーションによる学習を行うのみであるため,実体験することが重要となる実験教育に応用するには技術的に不十分である。そこで,本年度の研究では,シースルーディスプレイ,及び拡張現実(augmented reality; AR)を導入し,新たな立体映像処理システムを構築することにより,観測的リアリティの開発研究を行った。また,本システムではユーザーに対して,立体ディスプレイとシースルーディスプレイによる2種類の立体映像を同時に提示することになるため,ユーザーに眼精疲労を与えてしまうことが問題となる。従って,眼精疲労の原因となる映像の不自然さを軽減するために,適応的平滑化などの映像処理のソフトウェア開発も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究目的である「観測的リアリティ」のシステムを構築するために,シースルーディプレイ上にコンテンツを表示するために必要な映像処理処理のソフトウェアをほぼ計画どおりに作成できている。また,眼精疲労の問題に関しても,対策となる実時間映像処理のソフトウェアを作成し,立体コンテンツの見やすさを追求する人間工学的な研究を行った。これにより,眼精疲労の問題はおよそ解決できている。さらに,シースルーディプレイに小型CCDカメラを装備し,これを動作させるためのソフトウェア開発を行うことによって,AR技術も同時に用いることができるようになった。このAR技術への対応は,当初の計画にはなかったものであるが,ARの併用により,提案するシステムをより低コストで構築でき,さらにより幅広く応用することが可能になったため,当初の研究計画よりやや進歩したシステムを開発できている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究では,実験者が対象物を手にとり,対象物の操作や分解をすることによりその内部構造を学んだり(操作性リアリティ),ものを組み立て製作する(製作的リアリティ)といった,XVR空間上において実際のものづくりと同等の動作と体験を可能にするシステムを開発する研究を行う。これを実現するためには,前年度の研究で得られた観測的リアリティにより表現される立体映像コンテンツに対して,そのコンテンツが実際にユーザーの手元にあるかのように立体表示され,かつユーザーが自分の手で操作できるようなリアリティを実現する3D VRワークステーション・システムの開発研究を行う。 そして,平成27年度の研究では,XVRにおける製作的リアリティをより発展させるための設備として3Dプリンタを導入し,実際の製作部品(回路の基板や素子等)や製作したものと同等の実体モデルを造形するシステムの開発研究を行う。さらに,3D VRワークステーションとバーチャル計測システムを組み合わせることによって,計測的リアリティを実現するための研究を行う。これらの研究で構築するシステムにより,実際に作製した(回路などの)ものに対して測定器を用いた計測を行うこととほぼ同等の学習を可能にすることができるため,XVRによる実験教育支援システムが実用的になる。
|