まず、米国における組織的実践事例に基づき、学生の学びの観点を導入したコースポートフォリオ(以下、「ポートフォリオ」)作成用のテンプレートを開発した。 開発したテンプレートを利用し、2つの高等教育機関においてポートフォリオの実践プログラムを実施した。理学療法系の学科では、カリキュラム改訂を目的として全所属教員が、別の短期大学では数名の教員グループがプログラムに参加した。前者では、実施期間中、カリキュラム改訂に必要な要素を抽出した改訂版テンプレートを開発すると共に、教員間の相互評価を含む科目間の内容の整合性・順次性を吟味するための2度のワークショップを通じてテンプレートを精緻化した。これらの組織的実践から、科目の内容をポートフォリオで可視化することで、授業やカリキュラム改善に関する教員間の議論を活性化する可能性が示唆され、質問紙調査からは自身の授業やカリキュラムの視点から新たな気づきを多くの教員が得ており、ポートフォリオの作成や相互評価を通じて、授業やカリキュラムの改善が促されることが明らかとなった。 プログラム実施にあたり、当事者間での十分な事前調整が不可欠であり、テンプレート改訂のプロセスや、参加教員の半構造化インタビューを通じ、評価基準を詳細に既定したルーブリックを都度作成するよりむしろ、目的に応じてテンプレート上の項目を精査することの重要性が明らかとなった。 個人教員計19名の2グループに対しても本プログラムを実施した。ポートフォリオ作成過程において、対面およびオンライン掲示板上で相互評価を実施し、その成果をウェブ上で公開した。 コース管理システム上で稼働するテンプレート投稿機能を開発したが、前述の通りテンプレート上の項目がルーブリックの代替となることとセキュリティ面を考慮の上、当初の計画から変更し、新規開発のテンプレートはシステム管理者により公開可能とした。
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