研究課題/領域番号 |
25350295
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
宇井 美代子 玉川大学, 文学部, 准教授 (80400654)
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研究分担者 |
茅島 路子 玉川大学, 文学部, 教授 (80266238)
平嶋 宗 広島大学, 工学研究院, 教授 (10238355)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育工学 / 教育系心理学 / 認知科学 / 概念マップ / FD |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、貧困をテーマにしたオムニバス授業におけるKit-Build方式の概念マップ(KB概念マップ)を用いて、大学生の学びについて検討した。KB概念マップとは、講義担当者が作成した講義内容を表す概念マップ(ゴールマップ)から分解された概念とリンクを使用して、学習者が講義内容を再現するように概念マップ(学習者マップ)を組み立てるものである。学習者マップがゴールマップの形状に近いほど、そのスコアが高く、学習者は講義内容を理解したと判断する。 本年度は次の三点を明らかにした。第一に、学習者マップのスコアは、講義内容の一部を掘り下げることを求めるレポート課題の評価とは関連が見られないが、講義内容の総体的な理解を把握することを求めるレポート課題の評価と正の関連があることが明らかにされた。すなわち、KB概念マップは、学習者の講義についての総体的な理解を把握することに特に有効であることが示された。 第二に、学習者マップのスコアと学習スタイルとの相関を検討した結果、概念数やリンク数が少ない概念マップでは、既存知識と関連づけようとしながら学習を行う精緻化方略を使用する者ほど、概念数やリンク数がやや多い概念マップでは、自分の理解状態をメタ的に監視するモニタリング方略を使用する者ほど、それぞれ学習者マップのスコアが高いことが明らかにされた。すなわち、概念数やリンク数によって、学習者マップを組み立てる際に必要となる方略が異なる可能性が示唆された。 第三に、講義担当者がゴールマップと学習者マップを比較することにより、学習者の理解不足の点を具体的に、また短時間に把握することができ、講義の改善点の把握に役立つことが示唆された。すなわち、KB概念マップがFD活動に利用できる可能性が示唆された。 以上の分析結果に平成25年度に分析済みであったものを加えて、論文や学会において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、アカディミックな授業が受講生の知識構造に及ぼす影響について分析し、明らかにすることができた。また、受講生が作成した概念マップを授業担当者に確認してもらうことが、授業担当者に授業を振り返らせ、授業改善に向けての良い機会となることが示された。さらに、概念マップの作成・分析ツールであるCmapEditorの改良も進められている。このように、平成26年度以降に予定していた研究を進められていることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の育児休業に伴って平成27年度途中まで研究が中断するが、研究再開後は研究申請書に記したデータの収集、分析、研究成果の公表を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は研究を実施していた授業が開講されなかったため、受講生へのインタビューを含む録画・録音等による概念マップ作成時の思考過程の検討を行うことができなかった。そのため、インタビュー調査の書き起こし費用などの分析にかかる費用を使用することができなかった。また、研究代表者が育児休業により研究が中断したために、経費の使用が中断された。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降においては、受講生へのインタビューなどに基づきながら、概念マップ作成時の思考過程の検討を行う。また、概念マップ作成ツールであるCmapEditorの改良、学習観や学習態度やメタ認知活動等の心理特性と思考過程の関連の分析、授業担当者への調査、研究成果の発表、打ち合わせのための旅費等に、経費を使用する。
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