研究課題/領域番号 |
25350300
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 湘南工科大学 |
研究代表者 |
本多 博彦 湘南工科大学, 工学部, 講師 (90339797)
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研究分担者 |
高橋 宏 湘南工科大学, 工学部, 教授 (80454156)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヒューマンインターフェース / 支援システム / パソコン操作 / 情報デザイン / 人間工学 / バーチャルリアリティ |
研究概要 |
本研究は障がい者のパソコン操作支援を目的とし、操作を行う上で最大の障壁となる入力インターフェース部分について、個々の症状特性を考慮したポインタ動作を改善するシステム開発を行った。このシステムは、使用者の症状や病状進行による変化があっても、個々人の動作特性に追従し、その時点で最も扱いやすいポインタ感度を自動的に設定できるように設計された。システムの評価として、実際に、身障者にモニタして頂き、体の動きの調査、システムの効果などを定量的に測定することができた。また、湘南工科大学で「社会貢献活動」として以前より提携のある神奈川県社会福祉事業協会に協力して頂き、「高齢者向けパソコン教室」などで、本システムをインストールしたパソコンをモニターとして使用してもらい、実地調査を行うことができた。 また、姿勢維持困難な患者に対しては、GUIの視覚情報を部分的に音響情報としてユーザーに提示し、PCへのアクセスを支援するシステムの開発も行った。特に病状の進行と共に画面を見続けることが困難になるため、画面を見ていない時でも状態把握が可能となる音響情報を徐々に付加し、次のアクションを選択判断する事が可能となるシステムである。姿勢維持困難患者に対して、基礎的な検証実験を行い、PC画面上で異なる階層構造やフォーカス状態を判別できることを確認し、主観的な意見も含めて有効性を見出すことができた。 研究発表として、平成25年電気学会電子・情報・システム部門大会(2013.9.4~7、北見工業大学)、および国際学会International Conference on Simulation Technology (2013.9.11 Meiji Univ)などにおいて口頭発表を行い講演論文集に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポインタ操作の特性把握のため、被験者に拘束負荷を与えた状態で、異なる負荷に対する方向依存性、距離依存性、サイズ依存性について測定実験を行い、画面上25cm程度のポインタの操作特性を詳細に検証した。これらのパラメータを考慮した感度設定の最適値導出手法を設計することができた。様々な症状や個人による特性の違いにより、補正量は異なるが、無意識による不随意運動までを考慮したものにはなっていない。また、進行に適合した自動調整を行うためには、ポインタ動作のモニタリングに関してさらなるデータの蓄積が必要である。 また、音響情報による状態把握については、ユーザーがPCを何も操作していない静的な状態に着目し、この状態での画面情報の提供による作業の効率化について検討を行った。実験結果から、4種類までの効果音の重なりは聞き分けが可能であることが分かった。このことから、効果音と画面状態の関連性を既知としいれば、画面を見なくても効果音から現状の画面情報の判断が可能となり、画面情報の確認を効果音で補うことにより、操作時間の短縮も可能となることが示唆された。一方で継続的に鳴る効果音が他の作業の集中力を阻害することにならないか検証する必要もある。今年度は基礎的実験としてクレペリン試験を実施し、複数の異なる効果音での作業効率を測定し、音の種類による違いと聞き分け易さの相関関係を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
ポインタ動作の最適設定を導出するため、ポインタ操作時間を評価関数として取り扱い、ユーザーに最適な感度となるようなパラメータ調整を行う。そのためのデータ蓄積と、様々な症状や段階を考慮した設計を行う。また、情報取得のインターフェースについての検討も引き続き行う。効果音など音響情報を利用することで、視覚に囚われずに画面状態の判断ができることから、操作時間の短縮を期待できる。これまで利用した効果音は、定常状態の画面情報を判断する為、イメージがはっきりとした分かりやすい音を中心に選択し音の識別のしやすさに配慮していた。この為画面やボタンとの関連性が薄く、効果音を聞き取れてもそれを画面情報と結びつけることが困難な場合があった。また効果音は連続再生により音が鳴り続けるため、効果音の感じ方は人それぞれで違い、心地良い音と不快な音の判断は、個人の嗜好も加味され、どの効果音が適切なのか定量的に判断することは難しかった。そこで今年度は、重ね合わせることも考慮し音色に違いがありかつマスキングし合わない効果音を想定し、音響デザインを設計に取り入れて効果音の素材作りに活かしていく。そして静的な状態で、ユーザーにとって煩わしくない背景音と作業効率について相関関係を導く。そして実際にアプリケーションに適用させ、視覚情報の不足分を音響情報で補えるシステムとして拡張させていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
301,222円のうち研究分担者の分担金30万円は、全て論文投稿料として使用する予定であったが、査読完了まで時間がかかり支払いが次年度4月以降となったため、次年度に持ち越すこととした。 研究代表者分の直接経費90万円分はほぼ予定通り使用し1,222円が残ったが、この額では必要な消耗品(フラッシュメモリ64GB)が購入できないため次年度購入することとした。 持ち越した次年度使用額のうち、論文投稿料金として30万円分を使用する。 残り1,222円分はデータ記録媒体(フラッシュメモリ64GB)を次年度予算1,000円程度を足して購入予定。
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