連続した作業や姿勢を維持することが困難な上肢障がい者や難病患者の操作特性を考慮したシステム開発、及び情報取得の研究を行った。ソフトウェアキーボードなどの利用を想定し、ポインタ動作の最適感度導出のため、方向依存性、距離依存性、サイズ依存性についてデータベース化を行った。これにより、個々の症状や特性に合わせて補正量を調整し最適感度を導出する設計を行うことができた。検証実験により、マウス操作の負担を減らしつつパフォーマンスを維持できることを確認できた。また定期的なキャリブレーションにより、長期的な症状進行に合わせて徐々に感度調整を行うことも可能となった。首の動きをKinectを利用してポインタ制御に結びつけ、本研究の感度調整システムに適用する試みも行った。マウス操作と同等の制御は困難であったが、センサー感度の向上とモデリング校正により精度の向上を望める結果となった。 また、病状の進行と共に画面を見続けることが困難になる場合を想定し、画面を見ていない時でも状態把握が可能となる環境音を取り入れたインターフェースを設計した。煩わしさによる意識喚起の少ない環境音を組み合わせ、音源・リズム・音調の変化を組み合わせた音響デザインにより、画面上で異なる階層構造やフォーカス状態などの識別率、操作回数と煩わしさの相関関係を見出した。これにより、少ない操作回数で画面遷移や階層構造の移行を可能とし、操作能力の低下分を補完するシステムとなった。神奈川県社会福祉事業協会と連携し「高齢者向けパソコン教室」で、本システムをインストールしたPCを使用してもらい、作業時間の短縮や負担感などを調査することで有意性を検証することができた。研究成果として、平成27年度電気学会 産業応用部門大会にて口頭発表を行った(2015年9月)。また平成27年度電子情報通信学会、 HCGシンポジウム2015において口頭発表を行った(2015年12月)。
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