研究課題/領域番号 |
25350301
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
谷口 進一 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (50440483)
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研究分担者 |
西 誠 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (00189250)
山岡 英孝 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (10443045)
中 勉 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (40148151)
高 香滋 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (90175422)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クリティカルシンキング / 学修力 / ルーブリック / 数理系科目 / クリティカルシンキング態度尺度 |
研究実績の概要 |
前年度の結果をベースとして、研究代表者と分担者で構成された研究チームの担当する数学、物理、化学の各分野における授業において、クリティカルシンキング(以下CTとする)活用のインフュージョン、アクティブラーニング、CT活用課題の使用、CT活用を要する問題の試験への挿入などCT使用活性化をはかる教授方略の本格実施を行った。 この成果を測定するため、前年度作成したルーブリックを用いて学生による自己評定を実施した。その結果、①チームが担当したほぼ全ての授業において、一番CTの活性度が低いスケール1に該当する人数は、ルーブリックの5つのどの要素においても、授業開始時に比べ授業終了時では減少していた。②前年度はルーブリックによる自己評定の変化を大略的に観察するため要素得点の平均値を使用していたが、本年度は統計的正確性を期すため、ルーブリックが順序尺度であることを考慮し、ノンパラメトリック検定を用いて評価の中心が上方に移動したかどうかを確認した。その結果、チームが担当したどの授業においても、ルーブリックの5つの要素の内、2または3つの要素において、評価の上昇が有意に認められた。 さらに、CT評価を多面的に行うため、全学1,2年生を対象としたCT態度評価アンケートを本格的に実施し、得られた結果を因子分析、共分散構造分析などの多変量解析の手法により分析し、数理におけるCT態度尺度を作成した。この尺度に対する統計的なモデル検定は十分許容可能な値を示した。 また、教員による他者評価として、研究チームが担当した数学の授業において、試験の結果をもとに学修力向上度を測定し、学生を向上群と非向上群に分類し、これを目的変数とし、ルーブリックの要素や試験の点数などを説明変数としてロジスティック回帰分析を行ったところ、要素のうち1つまたは2つが向上度に有意に正の影響を与えており、CT活用による学修力向上が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度のトライアルによって得られた知見をもとに,予定どおりクリティカルシンキング(以下,CTとする)活用の活性度向上のため,数学,物理,化学の各分野において授業によるCTのインフュージョン,アクティブラーニング、CT活用課題の使用、CT活用を要する問題の試験への挿入などの本格実施を行うことができた。さらに,個別指導においてもコンセプトマップの作成などをとおしてCTの活用を促進した。これらCT促進のための教授方略がどのような効果を上げているかをルーブリックを用いて学生に自己評定を行わせた結果,授業終了時,または個別指導の結果,CT使用が活性化していることを確かめることができた。 また,CT活用のルーブリックによる自己評定,全学1,2年生対象に行っているCT自己評価に関するアンケート調査の内容の点検・評価を行った。ルーブリックに関しては,研究チームによる協議の結果,問題点は認められなかったため,継続性を重視し,そのまま使用することとした。CT自己評価に関するアンケートに関しては,CTを中心としジェネリックスキル全般に関するものから,CT態度尺度を作成するアンケート内容に変更し,このアンケート結果から,「数理におけるCT態度尺度」を構成することができた。 また,教員による他者評価として,研究チームのメンバーが担当している数理系の授業において,学生の試験の結果を標準化して,学修力向上群と非向上群に分類した。そして,学修力向上にCT活用度がどのように影響しているかを調べるため,分類した2群を目的変数とし,説明変数としてルーブリックにより調査したCT活用度の各要素の得点,試験の標準化得点などを説明変数として,ロジスティック回帰分析を行った。その結果,CT活用度が学修力向上に正に影響を与えていることを確認することができた。 以上,平成26年度に予定していた研究内容をほぼ遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度同様、研究代表者と分担者で構成された研究チームの担当する数学、物理、化学の各分野における授業において、クリティカルシンキング(以下CTとする)活用のインフュージョン、アクティブラーニング、CT活用課題の使用、CT活用を要する問題の試験への挿入などCT使用活性化をはかる教授方略の本格実施を継続して行う。この実施において、 CTの活性化を図るのみでなく、対象学生、学科などに違いがある場合でもCT活用度にどの程度、再現性があるか、さらに現状以上に効果のあるCT活性化の方略があるかどうか検討する。 また、CT評価を多面的に行うために作成した、「数理におけるCT態度尺度」を使用し全学1,2年生におけるCT態度尺度因子得点をもとにCT活用度の学部・学科による比較を行うと共に、学年による違い、経年変化などを調査する。 また、教員による他者評価の継続的実施として、研究チームが担当する数学、物理、化学の各分野の授業において、試験の結果や深い思考を要する問題における得点をもとに学修力の向上度を測定し、学生を向上群と非向上群に分類する。そして、この2群を目的変数とし、ルーブリックの要素や試験の点数、さらに新たに作成したCT態度尺度の因子得点などを説明変数としてロジスティック回帰分析を行い、CT活用度の学修力向上への影響を詳細に分析する。 以上の結果を纏め、目的であるCT活用による学修力向上効果の到達度を確認する。またこの結果を学会や大学教育関連のフォーラムなどで講演発表すると共に、大学教育関連の論文誌に投稿することにより公表し、外部評価を受ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
CT評価を多面的に行うため、平成25年度より全学1,2年生を対象としたCT評価に関わるアンケートを前学期・後学期の学期末に実施しており,平成26年度もCT態度尺度構成のための質問紙法によるアンケートを前学期・後学期の学期末に実施した。これらのアンケート調査結果の整理,データインプット,データ解析処理用の下準備などを申請時の計画通り,学生アルバイトを雇用し行ってもらっているが,本年度は雇用した学生アルバイトの中に,特にパソコンやデータ処理ソフトの扱いに精通している学生が,例年より多くいたため,データ処理が昨年度より短期間で終了した。このため,学生への謝金が当初予定していた額より少なくすんだため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今回生じた次年度使用額の金額を考慮し,平成27年度の研究成果発表のための学会出張の費用の補助に当てるか,または,調査・研究成果として得られたデータの保存、バックアップのため、フラッシュメモリーなどのデータ保存用品を消耗品として購入する費用にあてる予定である。
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