医療現場では様々な医療機器が使用され、これらを専門に扱う臨床工学技士が業務を行っている。臨床工学技士は、医療機器の操作、管理、点検、修理まで広範囲に及ぶ業務がある。そのため、高度な専門知識と技術力が要求される。しかし、臨床工学技士の育成において、限られた時間の中で、数多くの医療機器の原理や操作法を習熟することは難しい。そこで、本研究では情報科学と工学技術を融合し、実装置を準備することなく、低コストで、作業を模擬体験、繰返し練習することができるコンピュータ教育訓練支援システムを提案した。 本研究では動作訓練を必要とするシステム構成、問題抽出、問題解決を研究課題としている。そこで、医療機器例として人工透析装置を取り上げ、透析業務における穿刺技術の教育訓練支援システムの構成を行った。まず穿刺練習用模擬回路を製作し、腕モデルも作成し、穿刺針は実際に臨床現場のものを用いた。リアルタイム正誤判断ができるシステム構築にあたって教示用教師データが必要である。そこで、まず熟練技士の操作を記録し、測定と解析および定量化することによって、操作訓練の指標を決定した。同時に操作の教本ビデオも制作した。訓練指標となる教師データ、模擬回路、腕モデル、記録用カメラ、動作解析ソフトウェアを用いて、穿刺技術の教育訓練システムが構成された。本システムを利用する際、まず穿刺針の持ち方、穿刺動作の一連の流れを電子教本で学習者に教示を行う。その後、学習者が腕モデルに穿刺し、その穿刺動作を撮影してPCに伝送する。そこで、動画分析ソフトウェアを用いて、入針角度の測定や教師データとの重ね合わせにより、穿刺動作の分析と評価を行う。このように学習者がリアルタイムで正誤判断を受け、繰り返し練習によって穿刺技術の向上とつながった。
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