本研究は保育実践における保育記録の活用方法の変革が、保育環境構成や保育カリキュラム、保育の質の向上に効果をもたらすと考え、子どもの学びのプロセスを可視化する新たな記録の出力の方法論を開発することを目的とし、以下の4点を大きな軸として研究を進めてきた。1.保育記録の先駆的な活用方法を探究している国内外の保育実践の調査、2.実践現場での記録の可視化の実験的試み、3.新たな形のプロトタイプの制作を行い、4.学術発表のみならず、実践展を企画し、社会へ発信することとする。 平成27年度は3年間の研究期間の最終年度である。最終年度の成果の大きな特徴は、教育実践者自身が自律して学びの可視化を行うレベルに本研究が寄与したことである。1の調査は前年度で終了し、その知見から2.として本年度、最新の記録の活用方法について『幼稚園の魅力を伝える (情報デザイン)』と題するワークショップを幼稚園研修にて実施した。さらに、実践現場での記録の可視化の実験的試みを発展させ、保育者自身が記録や写真の編集を試み、印刷会社との交渉を経て幼稚園の紀要を完成させる支援を行った。3.については前年度に行った記録の外化のプロトタイプを活用し、実践者とともに展覧会の記録冊子を作成した。4の実績としては、昨年度初めて開催した新しい形の展覧会方式の教育実践展「第2回お茶の水女子大学ライフ×アート展」を開催した。本展覧会は、アートを通した学びを可視化した、だれもが参加できる参加型の展覧会である。場所は生活空間が漂うお茶の水女子大学が所有するユビキタス実験住宅OCHA HOUSEで開催した。保育や幼児教育に歴史のあるお茶の水女子大学ならではの光景が見られ、赤ちゃんが触れて楽しい作品もあり、赤ちゃん連れの親子も参加するような地域にも開かれた学びの展覧会として、本研究を社会に発信することができた。
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