研究課題/領域番号 |
25350322
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
長谷川 春生 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (80635144)
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研究分担者 |
伊藤 一成 青山学院大学, 社会情報学部, 准教授 (20406812)
上松 恵理子 武蔵野学院大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (50594462)
松下 慶太 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (80422913)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タブレットPC / 情報モラル / デジタル教材 / デジタル教科書 |
研究概要 |
本研究の目的は,教員だれもが指導可能な,学習効果の高い情報モラル学習を行うための,タブレットPCの活用を中心とした情報モラル学習単元とそのためのデジタル教材の開発である。1年目は,主に次の3点について研究を進めた。 1点目は,情報モラル学習の実施状況等に関する実態調査である。中部地方の1つの市を対象に,その市内の全小中学校約170校について,情報モラルの指導計画等の有無,教材等の整備状況,指導時数,指導内容等に関する調査を実施した。その結果,60%程度の学校から回答を得た。現在,調査内容についての分析を進めている。 2点目は,今後予想される子どもたちのネットワーク活用にかかわる状況の分析である。ツイッター,フェイスブック,ライン等,電子メールや初期のSNS等とは異なるコミュニケーションの手段が一般的に使用されるようになってきている。このようなコミュニケーション手段の特徴と,そこで起こっている問題等について検討した。特にSNS等への不適切画像の投稿について,その問題点を児童生徒自身に十分に考えさせるような指導がこれから特に重要になってくることが考えられる。 3点目は,小中学校の各教科・領域等におけるタブレットPCの活用事例を先行研究から調べ,活用の効果やこれからの活用可能性を明らかにすることである。文部科学省「学びのイノベーション事業」の成果,諸学会での小中学校におけるタブレットPCの活用に関する研究等を分析することと合わせて,小学校体育科のマット運動におけるタブレットPCの活用法,小学校音楽科のリコーダー指導におけるタブレットPCの活用法についての研究も同時に進め,情報モラル学習におけるタブレットPCの活用法等を考える上での基礎的な研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情報モラル学習の実施状況等に関する実態調査については,調査対象とした市の教育委員会,小学校長会,中学校長会に協力を依頼し,内容等について理解を得た上で実施することができた。調査内容についても,研究代表者・研究分担者だけでなく,情報モラル学習や生徒指導に詳しい小中学校の教員等と十分な検討を行った上で,さらに,情報モラルや情報機器について詳しい知識を持っていない教員に対しても質問内容が理解できるかを確認した上で実施したため,混乱なく実施することができた。調査結果については現在分析を進めている。 今後予想される子どもたちのネットワーク活用にかかわる状況の分析については,SNS等への不適切画像の投稿の問題が大きくなっているにもかかわらず,そのことに対応した情報モラルの指導が現在十分には行われていないこと,その指導に適切と思われる資料等がないことが分かった。 小学校体育科のマット運動におけるタブレットPCの活用法,小学校音楽科のリコーダー指導におけるタブレットPCの活用法についても,授業実践を通して研究を進めた。どちらもタブレットPCのビデオ機能の活用を中心とした授業実践であったが,児童は教師が作成したビデオクリップを効果的に活用することができるだけでなく,自分たちで撮影したビデオクリップを効果的に活用することもできた。児童に対して活用の意図を明確にすること等により,タブレットPCの活用が主体的・効果的に行われることが示唆された。また,これらの授業実践はコンピュータ室ではなく,体育館や音楽室での授業実践であり,今までのコンピュータでは実現しにくかった学習方法が可能であることも再確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の研究内容は,授業実践を実施する情報モラル学習単元の決定とその学習内容・方法の検討,それに合わせたタブレットPC用デジタル教材の検討である。 情報モラル学習単元の決定については,まず,25年度に実施した情報モラル学習の実施状況等に関する実態調査の結果の分析を進める。小中学校で情報モラル指導を担当する教員が指導の必要があると考えながら,適切な教材がなかったり,適切な指導方法が分からなかったりするため,指導が行われていない内容,また,最近のSNS等についての十分な知識がないため,指導がされていない内容等について明らかにする。そして,SNS等への不適切画像の投稿など,今後,小中学校においても指導の必要性が高まると考えられる内容も十分に踏まえつつ,タブレットPCを活用した情報モラル学習を実施する単元を検討する。 同時にタブレットPCを活用した学習の方法等についても検討を進める。情報モラル学習においては,教師からの指導のみによる学習では効果がないこと明らかになっている。児童生徒の主体的な学習,仲間と共に進める協働学習などの方法を中心に,タブレットPCの活用法の検討を行う。 このような観点から,現在,学習の必要性が高く,また,タブレットPCの効果的な活用が可能な内容を決定し,その単元の開発を行う。 タブレットPC上で使用するデジタル教材についても検討を進めるが,タブレットPC用のアプリ,ホームページ等,既に使用されているもので,小中学生にも使用可能なものは,そのまま活用することにし,教材等の開発よりもその活用法についての検討を十分に行うことにしたい。また,デジタル教材等については,できるだけ機種に依存せず,どのタブレットPCでも活用できるものを中心に検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費で購入予定であったデジタル教材の検討・開発のためのタブレットPCについて,研究を進める中で授業実践における使用機種の変更が生じる可能性が出てきたため,購入を1年遅くしたことなどによる。 授業実践の内容等を基にそこで使用するタブレットPCやそれに関連する機器を決定し,購入する予定である。
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