研究課題/領域番号 |
25350334
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
村川 雅弘 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (50167681)
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研究分担者 |
久我 直人 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (20452659)
島田 希 高知大学, 教育研究部・人文社会学系, 講師 (40506713)
藤原 伸彦 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (60333564)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 授業実践力 / 授業研究 / 校内研修 / 集合研修 / 診断チェックリスト / ワークショップ |
研究実績の概要 |
研究目的は,主に授業実践力の向上を目的とした集合研修及び校内研修と個人研修を有機的に関連づけるための総合的な研修システムを開発することである。そのために,以下の研究を実施してきた。 ①各地の教育センターや学校での授業力向上や授業研究にかかわる研修で扱う教師の力量である「授業実践力」に関する整理枠組み(「学級文化創出力」「学習規律形成力」「学習技能育成力」「授業構想設計力」「授業展開評価力」の5層)を基に,自己の授業を診断するためのチェックリストを作成し,主に若手教師の授業実践力の自己分析に活用した。 ②個々の教師が日常的に自らの授業実践の省察と改善を行う上で,それを支援するための「授業実践力デジタルポートフォリオ」(iPadとJR四国コミュニケーションウェアの「コラボノート」を活用)を開発した。①で整理した「授業実践力」の枠組みを省察・改善の視点として、主に若手教師が自己の実践記録(板書や教材等)や熟達教師の手だて(発問や板書,教室環境)の整理・蓄積を行った。また,校内研修と個人研修をつなぐための主体的・協同的な研修(「仲間研修」と呼ぶ)において,熟達教師による自己の授業解説や対話リフレクション,メンター制の導入等の研修方法を組み入れて実施した。 ③校内研修を活性化させるための集合研修の工夫・改善として,高知県教育センターと共同し,1)ワークショップ型研修を主体とした集合研修と各学校の校内研修の企画・実施を体系的に連動させた研修プログラムの開発,2)校内研修の活性化の要素に基づいて構成された診断チェックリストの開発,3)診断チェックリストを活用した集合研修の成果の検証を行った。 ④各学校の校内研修の工夫・改善を支援するためのネットワークシステムに組み入れるデータに関しては,高知県140名の研究主任によるワークショップ成果及び各校から収集した関連資料を基に整理の過程にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①授業実践力の内容と構造に関しては,5つの層に対応する具体的なチェックリストを作成し,若手教師を対象に試行した。自己の授業の課題をより具体的に評価するためには項目が多くなりすぎた。項目の精選や教師の成長段階による項目の重み付けが必要である。 ②「授業実践力デジタルポートフォリオ」を開発することができたが,自己の授業実践や熟達教師の手だてに関するデータを整理・蓄積・活用することが日常的に行われなかった。若年教師を中心とした「仲間研修」に関しても同様で,自己省察による授業改善よりも次の授業づくりに時間を費やしていることが課題である。 ③高知県における授業実践力向上を目的とした集合研修と校内研修を連動させる取り組みは大きな成果を得た。開発された校内研修診断チェックリスト及び自由記述の結果から,1)集合研修と校内研修を往還・関連させることで,集合研修で獲得した校内研修に関する知識やスキルが校内研修において活用され,自校の校内研修の活性化に繋がったこと,2)校内研修の活性化のためには校内研修診断チェックリストに示されている各要素を意図的に校内研修に組み込むことの必要性を受講者が理解したこと,3)ワークショップ型研修の形態が各構成要素を意図した校内研修を実現するために効果的・効率的であると受講者が実感したこと,が推察される。 ④高知県の140名の研究主任が約半年間の実践を通して得た知見をワークショップにより整理した。「子どもの考えの引き出し方」「効果的な話し合い」「ノート指導の工夫」「学習の振り返りの充実」など10の視点に基づいた言語活動の活動を中心とした授業実践力向上のための校内研修の活性化についての手だてをまとめることができた。校内研修開発支援システムに組み込むデータとして有効活用が期待できる。 ⑤総合的な研修システムの構築には,①~④の研究成果を相互に関連づけることが求められる。
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今後の研究の推進方策 |
①授業実践力の内容と構造に関しては,5つの層に対応させ開発した授業力診断チェックリストを,例えば,1)日常的に自己の授業実践を評価するためのもの,2)年に3回程度,自己の実践をきめ細かく診断したり総括的に評価するためのもの,3)他の教師が授業参観時に使用するもの,というように活用意図に応じた項目の精選を行う。 ②「授業実践力デジタルポートフォリオ」に関して,若手教師が自己の授業実践や熟達教師の手だてに関するデータを整理・蓄積・活用することが日常化するためには,そのための時間の確保を計画的に組み込む必要がある。対話リフレクションや授業力診断チェックリスト及びデジタルポートフォリオを有機的に関連させる研修システムづくりを徳島県内の初任者研修(中学校3名)に実施する予定である。 ③高知県教育センターとの共同研究により,平成24年度より述べ340名の研究主任が約半年間の校内研修の実践を通して得た知見をワークショップにより整理した成果物がある。校内研修の活性化にかかわるものと主に言語活動を重視した授業づくりにかかわるものである。高知県内及び全国の小中学校より授業実践力に関する具体的な資料やマニュアルの収集も行っている。これらのデータを「研修開発支援ネットワークシステム」に組み入れる作業を推進すると共に,各地の教育センターの指導主事及び授業改善を主とする研究指定校の研究主任に活用してもらい,システムの改善・拡張を行う。システム活用をより活性化させるために,3人程度のテーマ別チーム編成による共同管理・データの再整理を行う予定である。 ④①~③が現時点では独立して進んでいる。各々が一つのシステムであるが,これらを相互に関連づけ,総合的な研修支援システムの構築を図っていきたい。
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