2015年度の研究では、質的なインタビューの手法を用いて、評価に関する研究を行った。最初に、7つのOERのケース(マサチューセッツ工科大学、ボストン大学、オハイオ州立大学、大阪大学、九州大学、北海道大学、京都大学)を選択し、OERの開発及び選択における質的ガイドラインの概念と応用について調査した。次に、得られたインタビューデータの分析を行い、異なる文化や教授コンテキストにおいて、どの程度教育方略がOERの適切かつ効果的な利用を促しているかを明らかにしようとした。そして最後に、得られた結果に基づき、OERの選択と利用において、次のような具体的な教育的方略の提案を行った。1)クラスルームベースの教授-学習コンテンツをグローバルレベルで開放する、2)協同的学びと学習者同士の評価を促進する、3)良く構成されたマルチメディア教材を提供する、4)OERに基づいた反転学習を活用することで伝統的な教室での授業を改善する。 さらに、OERの採用に当たり、教授者は次の3つの段階においてそれぞれの要素に注意を払うべきであることが提案された。 ・OER選択の段階:教授者はその効果に主たる関心を払いがちだが、その効率性と拡張性について関心を払うことで将来におけるOERの共有を意識できる。 ・OER実施の段階:教授者はその効果と魅力に主たる関心を払いがちだが、OER採用の重要な要素としてその拡張性についても注目すべきである。そうすることで、OERを様々な学習目的に利用することが可能になる。このように、効果と魅力と拡張の要素に注目することでOERの可能性は最大化されるであろう。 ・OER評価の段階:教授者はその拡張性と効果に注目しがちだが、さらにOERを共有し共同利用するという観点から、そのOERが教授時間や学習時間、そして様々な労力を低減させたかについても関心を払うべきである。
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