研究課題/領域番号 |
25350359
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
中村 晃 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (60387355)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 知識構造 / 数学 / ネットワーク / グラフ / 可視化 / ハイパーリンク |
研究実績の概要 |
本研究は、1.インターネットで公開している「KIT数学ナビゲーション」というオンライン数学参考書のハイパーリンクの構造をネットワーク解析することにより、数学の知識構造のグラフ図を作成しその構造を可視化すること、2.アクセスログデータと数学知識構造とを関連させた学習動向分析手法を確立すること、3.数学知識構造の認知が学習者に及ぼす影響を評価し考察すること、以上の3ステップから成る。平成26年度は、2の研究に取り組んだ。 数学の知識構造は基本的な知識を組み合わせながら応用的な難易度の高い知識が構築されている階層構造を持っている。学習動向を分析するためには、この階層構造(難易度)を分析して指標化する必要がある。KIT数学ナビゲーションでは、ある数学知識の解説に必要な基礎的な知識はハイパーリンクによってその内容が参照できる。すなわち、ハイパーリンクの方向は応用的な難易度の高い知識を記述しているページから基礎的な難易度の低いページに向かっている。このハイパーリンクの特徴を利用して、約800に及ぶ数学知識の階層構造を隣接行列を用いて解析し、各ページに記載されている数学知識の難易度を指標化した。解析では、難易度の高い知識ほど難易度の高い知識を参照しているという仮定を用いた。得られた難易度を指標化したデータは概ね受け入れられるものであった。重積分の知識や偏微分などの難易度の高い知識が一部下位にランクされていた。その原因は、それらの知識からのハイパーリンクが少なく、正しく評価するためのデータが不足していたためであることが分かった。そのため、平成27年度に実施しる予定であった数学の知識構造のグラフの最適化を並行して実施した。指標化データの作成に手間取ったため、アクセスログデータと難易度を指標化したデータとを関連させた学習動向分析手法の確立については継続取り組み中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.数学の知識の難易度を指標化するためのプログラムの開発:指標化するプログラムをPHPとMySQLを組み合わせて作成した。また、難易度を指標化したものを11段階に分けて色分けしたグラフ図も作成した。青色から緑色を経由して赤色になるに従って基礎的な内容から応用的な内容になっている。このグラフ図は、http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/gexf-js/index.cgi で公開している。これらの成果を国際会議で2件、論文に1件、発表をした。 2.ネットワークデータと難易度の指標化データを組み合わせて、各ページの上部にインバウンドリンク、すなわち、そのページを参照している応用的数学知識へのハイパーリンクを動的に表示するようにウェブページに機能を付け加え、既に公開している(firefoxには未対応)。この機能は、学習効率を向上さなど学習行動に大きく影響を与えると考えている。(計画外の取り組み) 3.数学の知識構造グラフの最適化:数学知識構造のグラフ図や数学知識の難易度の指標化データから、ハイパーリンク構造(数学の知識構造)の最適化を図った。その成果を国内で1件発表をした。(計画の前倒し) 4.学習行動分析プログラムの開発:膨大なアクセスログデータから各学習者の行動履歴のデータを抽出し分析可能なデータにするPHPとMySQLを組み合わせたプログラムは7割程度出来上がっている。しかし、指標化したデータとアクセスログデータを組み合わせた学習動向分析プログラムの開発はできていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.学習行動分析プログラムの開発:KIT数学ナビゲーションの各ページの数学の知識の難易度を指標化したデータと各学習者のアクセスログデータからを得られるページ滞在時間、リンクをクリックして参照したページ等のデータを組み合わせて、学習者がどのように知識構造の可視化を利用しているのか、学習者が学習目標に対して基礎的な内容を学習する傾向にあるのか、高度な内容を学習する傾向にあるのか等を分析し、学習者の学力および学習意欲を数値化するプログラムを作成する。 2.数学の知識構造グラフの最適化:グラフ図および指標化データを基にしたり、数学の専門家の意見を参考にしたりして、ハイパーリンクの張り方等に変更を加え知識構造グラフの最適化を図る。 2.知識構造の可視化が学習に及ぼす効果の質的リサーチ:学習行動をログ解析から分析し、アンケートやインタビューも交え、知識構造の可視化が学習行動にどのような効果を及ぼしているかを分析する。 3.知識構造可視化による一般利用者の学習行動の変化の調査:一般公開しているKIT数学ナビゲーションでも知識構造の可視化を公開し、公開前後の一般利用者の学習行動の変化をアクセスログデータより分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年3月の国際会議に参加するために利用した航空運賃180,400円を次年度支払いにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年4月に上記航空運賃を既に支払った。
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備考 |
この研究成果を取り入れたKIT数学ナビゲーションが、第11回日本e-Learning大賞 ニューテクノロジー賞受賞
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