本研究では、KIT数学ナビゲーションのコンテンツから数学の知識を記述しているページのみを抽出し、それらのページ間に張られているハイパーリンクが数学の知識間の繋がり、すなわち知識の構造を示していると考え、我々が初めて数学の知識構造をネットワークグラフを用いて可視化した。ハイパーリンクは、知識の解説で他の知識を参照するために張られるので、ハイパーリンク先のページはハイパーリンク元のページより基礎的な内容である。この性質を基に本研究で開発したアルゴリズムによりハイパーリンク構造を分析し各ページに記載された知識の難易度を序列化することに成功した。また、他のページから多く参照されるページは重要な知識が記載されていると解釈できる。ネットワークグラフの1つの知識を表すノードの色で数学知識の難易度を、大きさで重要度を示すことにより、直観で数学の知識構造を理解できるようにした。このネットワークグラフと各ページとの連携もハイパーリンクで実現し、KIT数学ナビゲーションを用いた数学の学習効率を高めることが可能となった。平成28年度に、本学学生20名に対してインタビュー調査をした結果、数学の学習で分からないことがあるとほぼ全員がまずネット検索をすることが判明した。実際に数学ナビゲーションをよく利用している学生も数名いた。ただ、ネットワークグラフを初めてみる学生がほとんどで、知識構造の可視化を使って効率よくするためには使い方を指導する必要があることが分かった。そこで、使い方のページを作成した。また、ネット検索による学習の問題点は、適切はキーワードが入力できないと知りたい知識が掲載されているページを抽出できないことであるが、開発した数学知識構造の可視化のシステムを使うと、関連した知識を容易に抽出できるので学習に役立つとの意見が多くあった。数学知識構造の可視化の有効性を確認することができた。
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