情報通信ネットワークの研究開発用シミュレータであるNS2(The Network Simulator 2)を,Webブラウザ上で操作できるWebインターフェイスとWeb実行ツールを開発し,初学者でもネットワークのしくみや動作を学習することができるシステムの環境整備を行った.さらに,これらWebインターフェイスおよび実行ツールを,近年普及が進んでいるタブレット端末などのスマートデバイスで利用できる電子書籍に組み込むことにより,クラウド型統合学習システムとして開発した. なお,ネットワーク工学を学習するためのオリジナルなテキスト教材についても電子書籍として作成し,学習者がこのテキストを読みながら,同時にクラウド上のシミュレーションサービスを通してインタラクティブに学習できるようなシステムとしている. 次に開発したシステムを実際に授業・演習等の一部において活用した.研究代表者が所属する高専学生によるユーザビリティ評価を回顧法を用いて行い,より使いやすい(学習しやすい)システムにするための改善を行った.システム改善により,より高いユーザビリティ評価を得ることができている. 最終年度においては,本システムを使用した場合の教育効果を確認するための検証を行った.授業・演習においての達成度を定期試験により評価するとともに,システムを活用したユーザを対象にアンケート評価を実施した.すべての学習者はシラバスに記載した目標達成度を達成することができたと同時に,アンケート結果より,視覚的に情報通信ネットワークの挙動を理解することに役立ったという評価を得ることができた. 以上より,本研究で開発したシステムは,高専生などのネットワーク初学者に対して,ネットワーク工学の学習の質向上に貢献できたと考えられる.
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