研究課題/領域番号 |
25350375
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
杉山 滋郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), その他 (30179171)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中谷宇吉郎 / 雪氷科学 / 低温科学 / 科学随筆 / 科学啓蒙 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究実施計画に従い、中谷宇吉郎の 1)南極観測の態勢づくりへのコミット、2) 氷河の研究と軍事研究との関係について調査した。 1) については、第1次南極観測隊の派遣を担った人々の記録を発見し、それを詳細に分析した。また中谷宇吉郎の弟子にあたる人たちにも取材し、間接的な情報を得た。また中谷が当時、新聞や雑誌に発表した論説についても、網羅的に調査した。その結果、南極観測隊派遣に中谷がどのように関与したのか、これまで知られていた以上に詳しく明らかにすることができた。 2) については、雪氷永久凍土研究所(SIPRE)のResearch Paperなどを網羅的に調査し、またアメリカの大学(North Carolina State University, University of Illinois)や研究機関に保存されている、関連研究者の手稿、当時の新聞記事などを調査することで、東西冷戦とグリーンランドなど北極域の雪氷研究とがどのように関連していたのか、また軍事的な成果に直結しない基礎研究がどのように位置づけられていたのかについて、新しい知見を得ることができた。 以上の調査結果を、平成25年度の調査結果と統合し、中谷宇吉郎という一人の科学者の、統一的な全体像を明らかにする作業(執筆作業)も開始した。その結果、「役に立つ科学」「目的をもった基礎研究」「現場主義」などをキーワードにすることで、中谷宇吉郎の全体像を理解できそうであることが、明らかになりつつある。また中谷の生涯を、1930年代、1940~45年(戦時中)、1945~1950年(敗戦直後)、1950年代(講和条約、冷戦下での保革対立、経済成長へ)という4つの時期に分けて考えることで、中谷の科学研究や執筆活動と社会との関わりがよく理解できることも明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度に解明を進める予定であった、(C)南極観測の態勢づくりへのコミット、ならびに(D)氷河の研究と軍事研究、に関して資料の発掘・収集をほぼ計画通りに終え、さらに平成27年度に実施予定であった、研究成果の取りまとめにも一部、取りかかることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、予定どおり、中谷の軍事研究、啓蒙活動、社会的発言などを時代的・社会的文脈の中に位置づけて考察し、「社会の要請に応える」「科学技術で社会を近代化する」といった彼の基本姿勢に光をあてる。また、積雪地方経済問題調査所など、中谷とは違うアプローチで雪の研究を行なった研究者たちと中谷との関係、研究交流についても、補足的に調査する。それら調査の結果を論文ならびに著書としてまとめ、公表する。
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